社会保障国民会議の有識者会議はこのほど、都内で3回目の会合を開き、給付付き税額控除の支援対象などについて議論した。簡素な仕組みで早期に開始するべきとする意見が大半を占めたほか、「世帯」を単位とせず「個人」をベースに現役の所得が低い労働者を対象として支援するべきという意見でおおむね一致した。
給付付き税額控除について、(1)支援の単位(2)支援の概要(3)支援の対象(4)金融所得や資産の扱い――の4項目の論点に沿って議論した。
税金や社会保険料は個人単位で負担している実態に合わせ、給付付き税額控除の制度設計にあたっても「世帯単位」ではなく、「個人単位」で検討することが望ましいとの意見が多数を占めた。一方で、世帯ごとの公平性を考慮して「世帯単位」も併用するべきだとする指摘もあった。
個人の資産や金融所得を正確に把握するための制度は、短期間で設計することが困難なことから、当初は簡素な仕組みでスタートするべきとの意見が出た。政府・与党内では、資産額などを反映しない簡易型の制度を導入するべきだという声が高まっている。また、現役世代を迅速に支援する観点から、年金など社会保障制度で支援されている高齢者を対象にする必要はないという意見も出た。
有識者会議は本来、「社会保障」全般について議論するものだが、当面は給付付き税額控除の制度設計だけに重点を置くことになりそうだ。
お墓や墓地、仏壇、仏具といった祭祀用の財産は、国民の感情や宗教観に配慮し、原則として相続税を課さないと定められている。同様に、葬儀の際に参列者から受け取る香典も、社会通念上相当と認められる範囲であれば、非課税だ。
このルールに着目し、生前に現金を純金製の「おりん」などの高価な仏具に換えて相続財産を圧縮する節税策がある。現金で持っていれば税金がかかるが、仏具にしてしまえば無税で家族に残せるという理屈だ。
ただし、税務署は、すべての仏具を無条件で非課税にしているわけではない。「骨とう的価値があるもの」や「投資目的で所有しているもの」は非課税特例から除外され、課税財産に算入されるという厳格な例外規定が存在するのだ。
厳密な境界線があるわけではないが、たとえ純金製の仏具を購入しても、日常的な礼拝に使われた形跡がなければ、非課税特例の対象とする申告が否認される可能性がある。節税目的での過度な仏具購入は、税務調査で否認され、重い追徴課税を招く危険があると覚えておきたい。
JR東日本は今春、約40年ぶりに運賃の本格的な値上げに踏み切った。全体の改定率は7.1%で、通勤定期運賃に限れば平均12.0%もの値上げとなる。日々の営業活動で支払う交通費が増え、また通勤手当を支給している中小事業者にとっては定期券代の引き上げ分が単純に負担増となるわけで、今後のキャッシュフローを圧迫することになる。さらに、従業員の手取りが減るという事態につながりかねず、しかも事業主は定期券代が上がった分を超える負担を強いられるおそれがある。社会保険制度に仕組まれたいびつな構造によるもので、小粒の減税策の箕に隠れた"ステルス増税"といえそうだ。
通勤手当は鉄道会社に支払う実費の肩代わりに過ぎず、従業員の懐に入る"所得"とはいえない。そのため税制では、1カ月15万円までの支給であれば従業員に所得税が課税されないルールになっている。だが社会保険では取り扱いが異なる。通勤手当も基本給や残業代と同様に、保険料算定の基礎となる「報酬」に含めなくてはならない。そして社会保険制度上の報酬が増えると、保険料を決定する「標準報酬月額」の等級が上がってしまう可能性がある。
厚生年金保険の標準報酬月額は報酬月額に応じて32等級にわかれ、報酬がその境界線上にある場合には1円の違いでも等級がかわる。今回の運賃値上げで例えば31等級から最も上の32等級へとスライドすれば、従業員は月額2745円の負担増となってしまう。事業者ごとに加入している健康保険も同様の仕組みのため、負担が大きく増えるおそれがある。通勤手当の引き上げ分は通勤定期運賃の値上げ分と相殺で従業員にとって"プラマイゼロ"のはずが、手元に残る現金が減るというわけだ。将来的に受け取る厚生年金が増えるといっても支払い分を取り戻せるとは限らず、納得できる従業員は少ないだろう。
そのうえ、事業主が強いられる負担も増えてしまう。よく知られているとおり、社会保険料は事業主も従業員と同額を支払わなければならない労使折半の仕組みとなっているためだ。通勤定期運賃の値上がり分に社会保険料の納付の増加分が加われば、従業員規模によっては年間で数十万円~数百万円単位のコスト増となりかねない。
大量の契約書や領収書を発行する際、1枚ずつ収入印紙を貼り、ハンコで消印を押す作業は、経理担当者にとって大変な負担だ。単純に事務量が多いだけでなく、金券と同じである物理的な印紙の紛失リスク、押し忘れによる過怠税の恐怖もある。
そこで、こうした事務負担やリスクを一掃する「税印」という制度がある。正式名称は「税印押なつによる納付の特例」。切手のような収入印紙を買って貼る代わりに、課税文書に課される印紙税相当額をあらかじめ現金納付したうえで、税務署に直接持ち込んで税印の押印を請求する仕組みだ。これにより、印紙を貼って消印をしたのと同じ法的な効力を持つわけだ。
税印の最大のメリットは、印紙の購入・管理・貼付・消印という一連のアナログな作業とミスを完全になくせる点にある。一方で、大量の書類を税務署まで物理的に運び込む労力はかかる。
ただし、税印には納付した印紙税額は表示されない。そのため、現実に文書が作成される段階にならなければ印紙税額が確定しないような文書は、税務署から税印押印の請求を棄却される。例えば、不動産譲渡に関する契約書など、印紙税額が文書の記載金額によって異なり、その記載金額が明らかでない場合、税印は使えない。
防衛力強化に伴う、いわゆる〝防衛増税〟が4月からスタートした。まず対象となるのは法人税とたばこ税で、来年1月からは所得税も引き上げられる見込みとなっている。政府は3税の増税で1兆円強を確保する方針。
法人税は4月以降の事業年度から引き上げられる。法人税額から500万円を差し引いた金額に4%の付加税を課す仕組み。法人税額が500万円以下の企業は対象外となっている。
たばこ税は、加熱式たばこの税率を4月と10月に引き上げて、紙巻きたばこの税率と同一とする。その後は来年4月から1年ごとに計3回、1本あたり0.5円ずつ引き上げる計画となっている。
所得税の引き上げは来年1月から。所得税額に1%を上乗せするかたちで実施する方針。同時に復興特別所得税の税率を1%引き下げる。このため納税者の負担は当面増えないが、復興特別所得税の課税期間は延長されるため、長期的にみれば負担は大きくなる。
消費税の事務負担を軽くするため、基準期間の売上高が5千万円以下の企業には、簡易課税制度が認められている。実際の仕入額を計算せず、業種ごとの「みなし仕入率」を売上に掛けて納税額を算出する便利な制度だが、この「業種区分」には落とし穴もある。
みなし仕入率は、事業の性質によって第1種から第6種まで細かく分けられているのが特徴だ。例えば、卸売業は90%で、売上の10%にだけ消費税が課される。卸売業が最も有利で、小売業は80%、飲食業は60%、サービス業は50%、不動産業は40%と、業種によって控除できる割合が減っていくことになる。
ここでの落とし穴が、複数事業の混同だ。例えば、飲食店(60%)の店頭で、自家製ドレッシングのテイクアウト販売(小売業:80%)を始めたとしよう。本来なら有利な80%を使える売上があるのに、レジで売上区分を分けず、どんぶり勘定で合算してしまうと、全体に最も低い仕入率(この場合60%)が適用されてしまう。手間を惜しんだばかりに、払わなくてもいい税金を国に納めることになるのだ。
簡易課税を選ぶなら、レジや請求書の段階から「どの業種の売上か」を厳格に区分けしておきたい。
国土交通省は3月17日、今年1月1日時点の「公示地価」を発表した。住宅地や商業地などを合わせた地価全体の全国平均は前年から2.8%上昇し、2022年から5年連続でプラスとなった。公示地価は土地の取引価格の目安となるほか、固定資産税路線価の算定や公共事業用地買収時の取得価格の算定などで基準として利用される。
住宅地、商業地、工業地を含む全用途の地価の全国平均は2.8%上昇し、前年の上昇率2.7%を上回った。東京圏は5.7%、大阪圏は3.8%上昇。名古屋圏を含む3大都市圏では4.6%上昇した。地方中枢4都市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)も4.5%上昇した。しかし、名古屋圏と地方中枢4都市は前年に続き上昇率が縮小している。
用途別にみると、住宅地の上昇率は前年と同様の2.1%。3大都市圏と地方中枢4都市ではともに3.5%上昇した。最も伸びた地点はリゾート需要が高い長野県白馬村で、上昇率は33.0%だった。住宅地は31都道府県(前年30都道府県)で上昇した。
商業地の上昇率の全国平均は4.3%で、3大都市圏が7.8%、地方中枢4都市が6.4%だった。なかでも上昇率が高かった地点は、次世代半導体の量産化を目指す「ラピダス」の工場建設が進む北海道千歳市で、44.1%の上昇を示した。商業地は38都道府県(前年34都道府県)で上昇した。
最高価額は住宅地、商業地ともに昨年と同地点。住宅地は「港区赤坂1丁目」が9年連続のトップで、1㎡当たりの価額は711万円(前年590万円)。商業地は「中央区銀座4丁目(山野楽器銀座本店)」が20年連続のトップで、1㎡当たりの価額は6710万円(同6050万円)だった。
深夜まで残業して終電を逃した社員に対し、会社が近くのビジネスホテルの宿泊代を負担するケースがある。原則として、社員へのホテル代の支給は、業務上の必要性から生じた宿泊であり、社会通念上妥当な金額であれば、給与として課税されることはない。
会社の業務命令で深夜まで働き、帰宅困難になった以上、その穴埋めは「業務遂行上必要な経費」と認められるためだ。タクシーで帰宅させた場合の実費負担も、同様の扱いとなる。
しかし気を付けたいのが、その支払い方法だ。領収書と引き換えにホテル代の実費を精算していれば問題ない。だが、「深夜宿泊手当」などとして、領収書不要で一律1万円を現金支給していたり、通常のビジネスホテルで済むところを高級ホテルに宿泊させていたりした場合、実費を超えた部分や定額支給は、使い道が自由なお金として全額「給与」に認定されかねない。
そうなると社員は給与課税を受け、会社も源泉徴収漏れを指摘されてしまう。社員を労うつもりが、かえって双方の税負担を増やさないよう、実費精算のルールを徹底したい。
名古屋国税局はこのほど、一時的に非居住者となったひとの株式譲渡損失の繰越控除に関する照会に対し、回答文書「非居住者となった場合の上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用について(恒久的施設を有しない非居住者であった期間における損失申告書の提出の可否)」で見解を示した。「恒久的施設を有しない非居住者」である期間についても「損失申告書」を提出できるとしたうえで、譲渡損失の繰越控除の適用条件を満たすことが可能だとする照会者の解釈を認めている。
照会者は、日本で働いていた年の株式の譲渡損失について、翌年以降に繰越控除の適用を受ける目的で確定申告書を提出。損失発生の翌年(2年目)、外国法人に勤務するために年の途中から「恒久的施設を有しない非居住者」となり、その次の年(3年目)は1年を通して「恒久的施設を有しない非居住者」となった。その翌年(4年目)、帰国して「居住者」に戻っている。
上場株式の譲渡損失の繰越控除は、居住者または恒久的施設を有する非居住者が、(1)上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税につき確定申告書を提出し、(2)その後において連続して確定申告書を提出している(連年提出要件)――という条件を満たすことで適用できる。照会者は2年目には国内源泉所得があるため、譲渡損失を翌年以降に繰り越す旨の確定申告書を提出した。だが3年目には国内源泉所得がなく、確定申告や還付申告の対象とならない。
こうしたケースでは租税特別措置法(第37条の12の2第9項)の規定に基づいて「損失申告書」を提出できる。また、それによって繰越控除の「連年提出要件」(前記(2))を満たすことが可能となる。だが同項には「居住者又は恒久的施設を有する非居住者」と記載されており、「恒久的施設を有しない非居住者」には言及されていないため、損失申告書提出の可否が不明確だった。
同項についての照会者の解釈は、「居住者又は恒久的施設を有する非居住者」との記載はあくまでも「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用を受ける年」の要件だとするもの。「恒久的施設を有しない非居住者」である3年目には損失申告書の提出が可能で、繰越控除を適用する4年目には居住者であるため、同項の規定に合致するものと解釈していた。
この解釈について照会を受けた国税当局は「ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません」と回答。「恒久的施設を有しない非居住者」である期間も損失申告書の提出が可能であるとした。
父が亡くなり、その相続手続きが終わった矢先に母も――。このように身内の不幸が続いた場合、短期間に同じ財産へ二度も相続税がかかる「二重課税」の状態は、残された家族にとってあまりに酷だ。この負担を調整するために、「相次相続控除」という仕組みがある。
相次相続控除は、前回の相続(1次相続)から今回の相続(2次相続)までの期間が「10年以内」であれば適用できるもの。仕組みはシンプルで、1次相続で課された税金のうち、一定額を今回の相続税から差し引くことができる。控除額は2回の相続の間隔が短いほど大きく、1年経過するごとに10%ずつ減額され、10年でゼロになる。例えば、1年後であれば1次相続の税額相当分の90%が控除対象となる計算だ。
注意したいのは、申告が要件である点だ。自動的に計算され、税額が軽減されるわけではなく、申告書への記載と計算明細の添付が必須となる。また1次相続で、相続税の配偶者控除を使って納税額がゼロだった場合は、控除の元となる税金がないため適用できない。
悲しみの連鎖のなかでも、過去の申告書を確認し、いつ誰がいくら払ったかを照らし合わせることが、遺族の手元に残される財産を増やすことにつながると覚えておきたい。
財務省は3月5日、2025年度の国民負担率が46.1%になる見込みだと発表した。24年度に比べて0.6ポイントの低下となる。国民負担率は、個人・法人が所得から払っている税金や社会保険料の割合を示すもの。前年度比で若干低下したものの、依然として高水準にあるといえる。
税負担が前年度比0.1ポイント上昇して28.3%、社会保障負担が同0.7ポイント低下して17.8%となる見通し。国と地方の財政赤字を加えた潜在的な国民負担率は同1.2ポイント低下して49.1%になると推計している。
財務省では、26年度の国民負担率について、賃上げによる所得の増加に加え「年収の壁」の引き上げなどの減税策が影響し、45.7%に低下すると見通す。潜在的な負担率は48.4%と推計する。ただし、政府が赤字国債を発行すれば、国民負担率はさらに膨らむ可能性がある。
国民負担率は比較可能な70年度以降、徐々に上昇している。70年度は24%台だったが、79年度には30%台に達した。潜在値はそれよりも早く、74年度にはすでに30%台となっていた。はじめて40%台に到達したのは13年度だが、そのころの潜在値は頻繁に50%を突破するようになっていた。20年度にはコロナ禍への支援対策で赤字国債の発行が急増したため、国民負担率は47.3%に上昇し、潜在値も62.6%にまで跳ね上がったが、それ以降は徐々に改善しているといえる。
宝くじで10億円が当たっても、所得税や住民税は1円もかからない。法律で非課税と決められているからだ。しかし、この非課税という言葉に安心して、家族や友人に幸せをおすそ分けしようとすると、税務署から最高税率55%にも達する贈与税を課されてしまいかねない。
例えば、夫が代表して換金し、後から妻や子どもに1億円ずつ配ったとする。税務上、これは「夫の資産を妻子に贈与した」とみなされる。当せん金そのものは非課税でも、それを他人に渡す行為は別問題だからだ。そして、これを防ぐ唯一の方法として知られるのが、換金時に窓口で「共同購入」だと申告する手法だ。
10億円という巨額のお金が絡む話なだけに、その手続きは慎重に行わねばならない。最も有効なのは、受け取りの際には、購入者全員がそろって銀行に行き、その場で「誰が共同購入し、それぞれの配分はどうするか」を伝え、発行される当せん証明書に全員の氏名と受取額を記載してもらうことだ。これがあれば、分配金は贈与ではなく、それぞれの持ち分として扱われるため、堂々と非課税で受け取れるというわけだ。
一度個人の口座に入金されてからでは、手遅れになることが多い。高額当せんの興奮で冷静さを失わず、まずはしっかりと落ち着いてから判断すること。それが、幸運を不運に変えないための鉄則だといえる。
政府は2月24日、「予算・税制に係る公的制度の基準額の点検・見直しに関する関係府省庁連絡会議」を開催した。2026年度の予算・税制改正に基づいて見直される予定の公的制度の「基準額」について内閣府と総務省が報告した。
非課税限度額や所得控除額、補助基準額などの予算・税制に関する公的な「基準額」のなかには、長年据え置かれたままのものが少なくない。府省庁横断の連絡会議ではこうした「基準額」について点検・見直しに取り組んできた。
報告によると、昨年末の予算編成過程を経て決定した「基準額」の見直しは301件。このうち据置期間が10年以上だったのは、給付金が月額3万2千円から5万4700円(0~6歳)に引き上げられる「交通遺児育成給付金支給事業」(据置期間45年)など21件だった。
税制改正では、国税で21件(据置期間10年以上9件)、地方税で18件(同11件)の「基準額」が見直される。具体的には「食事支給に係る所得税非課税限度額」(据置期間42年)、「深夜勤務の夜食代に係る所得税非課税限度額」(同42年)、「中小企業者等の少額減価償却資産の損金算入の特例」(同23年)、「マイカー通勤に係る通勤手当の所得税非課税限度額」(同12年)など。また、所得税の基礎控除の所得控除額は25年度の税制改正でも変更されたが、それまでは30年間据え置かれていた。これらの見直しは、物価上昇など経済の変化を長期にわたって反映させてこなかった「基準額」について、現在の水準に見合ったものとすることで、家庭や企業の負担の増加を抑える狙いがある。
昨年4月に適用された通勤手当の非課税限度額の引き上げに続き、物価高騰や人件費の上昇を踏まえ、最新の2026年度税制改正でもさらなる拡充が見込まれている。地方の中小企業にとって影響が大きい、マイカー通勤者に対する「駐車場代」と「長距離通勤」に関する非課税枠の見直しだ。施行は今年4月1日となる。
まず、これまで全額課税対象だった「駐車場代」に対し、月額5千円までの非課税枠が新設される。会社が駐車場を借り上げて従業員に貸与する場合や、従業員が負担する駐車場代を通勤手当として支給する場合、5千円までなら所得税がかからないものだ。実質的な手取り増となるため、採用競争力の強化にもつながるだろう。
また、非課税限度額の距離区分も細分化される。現在は片道55キロメートル以上が一律の上限だが、65キロメートル以上の区分が新設され、段階的に限度額が引き上げられる(最大95キロメートル以上で月額6万6400円)。4月の施行に向け、自社の給与規程や通勤手当の支給基準を見直す準備を始めたい。
国税庁はこのほど、大企業に対して税務上のコーポレートガバナンス(企業統治)を高めるよう働きかける「税務に関するコーポレートガバナンス(税務CG)」の取り組み実績を公表した。
大企業の"税の成績表"ともいえるもので、2024事務年度(24年7月~25年6月)は125法人に対して税務CGの判定を実施。22法人を「良好」、95法人を「おおむね良好」とした一方、8法人を「改善が必要」と評価した。9割の法人が「おおむね良好」以上の評価となったが、項目別では「税務部署のチェック体制が不十分」と評価された法人が4割あり、適正な税務処理の体制が整っていない大企業があることが浮き彫りになった。
税務CGの取り組みは、当局が企業に税務調査を行った際、税務についての会社の体制を確認・判定し、国税局調査部長らが経営責任者と面談して評価結果を伝達。そのうえで改善事項についての意見交換などを行う。当局はこれを「協力的手法」とし、資本金約40億円以上の「特別国税調査官(特官)所掌法人」約500社を対象に実施している。
実績のうち、具体的な評価項目では、「経営責任者等の関与・指導」を81%で「良好」とする一方、「税務(経理)担当部署等の体制・機能」を「良好」としたのは2割に満たなかった。
事業担当部署が精算した経費について、税務(経理)部署が適正かどうかをチェックする体制などが不十分だったとして、「改善が必要」と判定された法人が4割超に上り、多くの企業に足りていない部分だと当局が判断していることが分かる。
このほか、「税務に関する内部牽制の体制」や「税務調査での指摘事項等に係る再発防止策」も「良好」と判定したのは3割に満たなかった。
当局はこれまでの実績を踏まえ、特官所掌法人以外で、一定程度の規模以上の法人の一部に対しても税務CGの取り組みを試行している。今後、対象を拡大するかどうかを含めて「自発的な税務コンプライアンスの維持・向上に向けた取り組みの方向性を検討する」としている。
税務調査のメインイベントである「実地調査」は、通常2日間にわたって行われる。初日の午前中は「概況聴取」とも呼ばれ、経営理念や業界の動向、経営者の経歴などの雑談に近い対話から始まる。しかし、これは単なるアイスブレイクではない。調査官は会話を通じて、代表者の生活水準と役員報酬の整合性や、会社の意思決定プロセスに不自然な点がないかを、すでに探り始めている。
午後は帳簿や領収書、請求書などの資料確認に移る。ここでチェックされるのは、売上の計上時期が適切か、期末付近の売上の繰り延べがないか、私的な支出が経費に含まれていないか、といった点だ。また、パソコン内のメール履歴や、金庫・デスクの引き出しの確認を求められることもある。
2日目は、1日目の調査結果に基づいた各論点の深掘りや、調査官からの簡単な指摘が行われ、その後、税務署内での検討を経て、正式な調査結果が通知されることになる。
注意すべきは、質問に対して「うろ覚えで答えない」こと。事実に反する回答は、虚偽の説明とみなされ、調査官の心証を著しく悪化させる。不明な点は「確認して後ほど回答する」と冷静に伝え、根拠となる資料を提示することが重要だ。隠し立てせず、さりとて必要以上にひるまず、一貫性のある説明を尽くすことが、最短で調査を終えるための最善策だろう。
自由民主党はこのほど、同党サイトに「ますます広がるNISAつみたて枠18歳未満に拡充」と題する文書を公表した。2026年度税制改正のポイントのひとつとして、NISAの制度が拡充されることをアピールする内容。
26年度の税制改正によって「NISAの対象年齢を0歳までに拡大。18歳未満の場合、年間投資枠60万円で、非課税保有限度額は600万円となります。18歳になった時には、現行の積立投資枠に自動的に移行します」と解説したうえで、政府・与党では「必要な法改正を行い、27年からの制度開始」を目指していると周知している。
自民党ではこの文書のなかで「資産運用立国へ次の一手」として、NISAについては「24年から非課税措置が恒久化され、内容も大幅に拡充されました。口座開設の恒久化に加え、年間投資枠が合計360万円に拡大。非課税限度額も最大1800万円まで拡充され、保有期間も無期限になりました」と解説。こうした拡充は、長期的な資産運用を考える若年層や現役世代に大きな影響を与えると指摘したうえで「口座数は昨年6月末で2696万口座に達し、買い付け額は政府目標(27年末までに56兆円)を上回る累計63兆円となりました。口座を保有する年代は50代が最も多く約525万口座を保有。20代の保有数も470万口座を超えています」などと数字を挙げ、口座数・買付額の伸びをアピールしている。
また、この文書では「暗号資産取引を20%分離課税に」として、暗号資産取引をめぐる税制改正についても触れている。それによると、26年度税制改正では「暗号資産(仮想通貨)取引で得た所得に対する税率を、株や投資信託といった金融商品と同様に、約20%の申告分離課税の対象に加えます。これまで暗号資産から生じる所得は『雑所得』として扱われ、最高55%の税率がかかっていました。国内の暗号資産交換業者が扱う特定の資産が対象で、他の金融商品と同様に3年間の損失繰越控除も可能になります」と周知している。
法人税などの負担を考える際に、単一の税率だけを見るのは不十分だ。法人の所得には、国税である法人税のほか、地方税である住民税や事業税が課される。これらを合算し、さらに事業税が次期の損金に算入されることによる減税効果を考慮して算出された、実質的な税負担率が「法定実効税率」と呼ばれる数字だ。現在、標準的な中小企業では、実効税率はおおむね30%前後とされる。
しかし、実際の決算における税負担率は、この法定実効税率とは必ずしも一致しない。ここに税務上の申告調整が加わるためだ。例えば、役員給与の損金算入限度超過額や、交際費の損金不算入額などは、会計上の利益を減らしても税務上の所得を減らさない。こうした損金にならない費用が多いほど、利益に対する実際の税負担率は、法定実効税率よりも高くなってしまう。
逆に、所得拡大促進税制などの税額控除を適用できれば、算出された税額から直接差し引けるため、負担率は下がる。
つまり、経営者が注視すべきは、単なる利益の増減ではなく、この調整項目を含めた最終的な納税額のシミュレーションだといえる。表面上の税率に惑わされず、自社の税務上の「癖」を把握することが、確実な資金繰り計画への近道だろう。
2025事務年度前半分の「税理士懲戒処分公告」(処分権者=片山さつき財務相)が官報に記載された。毎年1月末と6月末に掲載されるもので、今回は税理士18人と税理士法人1社が対象となっている。処分の適用開始は1月19日もしくは20日。
処分の内容は、最も重い「禁止」が4件。処分を受けた日から3年間は税理士となる資格を持てず、登録を抹消される。次に重い処分の「停止」が14件で、最長2年間は税理士業務を行えない。最も軽い「戒告」は1件だった。
今回は法人の税務申告での不正・過失が多く発覚し、処分対象となった税理士18人のうち最多の10人が法人税申告での問題行為に関わっていた。例えば大阪府の税理士は、関与先の複数社で役務提供の事実がない架空の外注費などを計上することで不正に所得金額を圧縮した申告書を作成した。
また、東京都の税理士は、関与先の収入と経費の一部が同社に帰属すると知りながら、複数の個人に帰属するものとして同社の申告から除外することで、不正に所得金額を圧縮していた。いずれも最も重い禁止処分となっている。
法人税申告以外では、相続税関係で1人が禁止処分となった。東京都の税理士は、関与先の個人の全財産を自分に無償で贈与し、関与先の死亡で効力を生じる内容の死因贈与契約書を、関与先の意思に基づかずに作成した。さらに職務上請求した住民票の写しなどで関与先が死亡した事実を知り、関与先の不動産について、同契約書を用いて自分のための所有権移転登記をしたうえで第三者に売却。売却代金を自分名義の預金口座などで受領し、関与先の預金口座を解約して預金残高を取得した。
役員や従業員の住居費を会社がどこまで負担できるかは、多くの中小企業が悩むテーマだ。代表的な方法が「社宅」と「住宅手当」だが、税務上の扱いは大きく異なる。
社宅は、会社が物件を借り上げて貸与する仕組みで、入居者が一定の家賃(賃料相当額)を負担していれば、会社負担分を福利厚生費として処理しやすく、本人側の税負担も抑えられる。ただし、家賃が無償や著しく低額だと給与課税となってしまい、源泉徴収漏れのリスクも生じやすい。
これに対し、住宅手当は現金支給のため、原則として全額が給与となる。所得税や社会保険の対象にもなるため、会社側にとっては経費になるものの、税務メリットは限定的といえる。
社宅の実務では、さらに(1)賃貸借契約を会社名義で締結する(2)社宅規程や貸与契約書で対象者・負担額・退去時の扱いを明確化する(3)入居者負担分は給与天引きなどで確実に回収する――の3点を押さえたい。
一方、住宅手当を選ぶなら、給与課税であることを前提として、支給基準を給与規程に落とし込み、家族構成や勤務地に応じた合理性を示しておくと説明しやすいだろう。なお、役員社宅は計算式が異なる場合もあるため、金額設定を自己判断せず、税理士と確認してから運用を開始するのが安全だ。
日本中央競馬会(JRA)3連単の払い戻し記録を更新する"万馬券"が小倉競馬のレース(1月31日)で飛び出した。その払戻金は5836万7060円だという。
誰もが一度は当ててみたい万馬券だが、忘れてはならないのが、競馬で儲けた金にも税金がかかってくるということだ。払戻金から当たり馬券の購入費を差し引いた金額が50万円を超えていれば一時所得の課税対象となり、確定申告をして税金(所得税+住民税)を納付しなければならない。例えば、1万円の馬券を購入し、100万円の払戻金があった場合は、課税対象額は、{(100万円-1万円)-50万円}×2分の1=24万5千円となる。この金額をほかの所得と合算して税額を算出する。
高額払い戻し窓口では、住所や氏名を聞かれることはないので、税務署が競馬で儲けた人を把握できる仕組みはない。しかし、税務署は個人の銀行口座を調べ、一時金に大金が入っていることを確認し、通知を送るのだという。最近では馬券のネット購入が一般的となったこともあり、万馬券当選者の特定はより容易になっているようだ。
節税対策は、できるところから小まめに行いたいものだ。棚卸資産や固定資産、有価証券には、それぞれに評価損を計上する基準があり、ぜひチェックしてみてほしい。
まず棚卸資産だが、これは販売用の商品や製品のことで、時代遅れとなり陳腐化して売れ残ったものや、災害などでひどく損傷したもの、また破損や時間経過により品質が劣化した製品などを評価損として計上できる。
固定資産では、1年以上も遊休状態にある土地や家屋のほか、事故や災害のために甚大な損害を受けたもの、さらに本来の用途ではなく、やむをえず別の用途に使用した資産などが評価損の対象となる。
そして有価証券は、原則として売買が目的で所有していたものに限って評価損を計上できる。持ち合いで所有していた株などは、値下がりしても評価損の対象にならない。だが、帳簿価額より50%ほど値下がりして回復が当分の間見込めない上場有価証券や、資産状態と価額が著しく悪化した会社の株、商法による整理開始命令や会社更生法の手続き開始決定があった会社の株などは評価損が認められる。
国税庁はこのほど、2024事務年度(24年7月~25年6月)の「租税条約等に基づく各国との情報交換事績」を公表した。「CRS(共通報告基準)」で外国の税務当局から年間274万5374件の非居住者金融口座情報を受け取った一方で、国税庁からは32万8034件の口座情報を提供した。受け取った金融口座情報件数は過去最多。個人投資家の海外資産や企業の海外取引が増加するなかで、国際的な租税回避行為や資産隠しへの対応が各国で課題となっている。このため、国税庁は外国の税務当局との連携を強化している。
事績によると、国税当局がCRSに基づいて、24年7月からの1年間で外国から受け取った口座情報は274万5374件。このうち個人口座が約272万件で残高は約9.6兆円、法人口座が約3万件で残高は約8.1兆円だった。合計すると1年間で17.7兆円分もの口座情報を海外から入手していることになる。
一方、国税庁が外国の税務当局へ提供した口座情報は32万8034件。このうち個人口座が約31万件で残高は約1.3兆円、法人口座が約2万件で残高は約6.7兆円だった。口座情報の受領・提供件数ともに、アジア・大洋州の国と地域が最大の交換相手で、全体の約7割を占めている。
また、国税庁は「法定調書情報の自動的情報交換」の制度も活用し、日本人の海外資産の情報を取り寄せている。海外で利子、配当、不動産賃借料、知的財産使用料、給与、報酬、株式のキャピタルゲインなどの収入があった場合には、当該国で法定調書に記載して申告する必要がある。この制度では、法定調書情報が当該国の税務当局から国税庁へ自動的に送付される。国税庁は送られてきた法定調書情報をもとに、国内での申告内容と突き合わせて内容に誤りや虚偽が含まれていないかをチェックしている。24事務年度には、この制度によって12万6928件の非居住者情報を受け取り、92万649件の情報を外国税務当局に提供した。
国内で入手できる情報だけでは事実関係を突き止めきれない場合、必要な情報の収集・提供を外国の税務当局に要請することもある。こうした要請に応じるかたちで決算書、契約書、インボイス(送り状)、銀行預金口座取引明細書などが外国の税務当局から国税庁に寄せられる。外国当局の調査官が直接、取引担当者にヒアリングして得た情報などもあるという。24事務年度には、国税庁は505件の情報提供を要請し、外国税務当局からは326件の要請を受けた。
一つは「一括償却資産」。20万円未満の資産を対象に、法定耐用年数にかかわらず3年間で均等償却できる制度だ。一括償却資産のメリットは、月割計算が不要な点と、償却資産税の課税対象外となる点にある。年度末に駆け込みで購入しても、1年分(3分の1)を費用化できるため、非常に効率的だ。
もう一つは「少額減価償却資産の特例」。青色申告を行う中小企業者等に限り、30万円未満の資産を、取得した年度に全額損金算入できる仕組みだ。大きな節税効果が期待できるが、年間の合計限度額は300万円までとなる点に注意したい。また、こちらは一括償却とは異なり、原則として償却資産税の対象となる。
両制度のどちらを採用するかは選べるため、利益が出ている年度に即座に費用化したいなら少額減価償却資産の特例、償却資産税を抑えつつ安定的に費用化したいなら一括償却といった使い分けが肝要だろう。
なお少額減価償却資産の「30万円未満」基準は、最新の2026年度税制改正で見直され、「40万円未満」に引き上げられる予定だ。より使いやすくなることを覚えておきたい。
厚生労働省がこのほどまとめた2025年の「高年齢者雇用状況等報告」によると、70歳まで働ける制度を導入している事業者の割合は34.8%で、前年に比べて2.9ポイント上昇した。規模別にみると、中小事業者は35.2%で前年比2.8ポイント増加、大企業は29.5%で同4.0ポイント増加している。「70歳まで就労できる措置の整備」が事業者の努力義務とされた21年以降、大企業では導入割合が3割を超えていない。
「65歳まで就労できる措置の整備」については、中小・大企業とも99.9%が制度を導入している。このうち「継続雇用制度の導入」により実施している割合が65.1%、「定年の引き上げ」により実施している割合が31.0%となっている。
定年を65歳以上(定年制の廃止含む)としている事業者の割合は34.9%で前年比2.3ポイント増加した。厚労省が、この「報告」の集計対象としたのは、常時雇用する労働者が21人以上の23万7739事業者。このうち3.9%にあたる9367事業者が定年制を廃止している。定年を「60歳」としている事業者の割合は全体の62.2%、「65歳」は27.2%、「70歳以上」は2.5%。厚労省では「人手不足が深刻化し、高齢者の雇用が拡大している」と分析する。
税務調査には、対象となっている企業(本調査)の申告内容を確認するため、その取引先や銀行等に対して行う「反面調査」が存在する。主な調査内容は、売掛金や買掛金の残高照合、取引時期や金額の整合性の確認だ。国税当局は、双方の帳簿を突き合わせることで、売上の除外や架空経費の計上といった不正をあぶり出す。
反面調査は、特に調査対象が資料の提示を拒んだり、説明に矛盾があったりする場合に実施されやすいという。しかし、そうした"落ち度"がなくても反面調査は行われる。しかも反面調査は無予告であることも多いため、取引先に少なくない負担をかけるのが実情だ。
前述したように反面調査は無予告で行われることも多いため、事前の対策は難しい。できることがあるとすれば、日頃から契約書や領収書を整理し、第三者が見ても整合性の取れた会計処理を徹底することが、反面調査を未然に防ぎ、あるいは迅速に終わらせるための最大の防御策だといえるだろう。
2026年度税制改正大綱には、中小企業対策関連の主な項目として、(1)中小企業技術基盤強化税制の拡充・延長(2)事業承継税制に係る特例承継計画の期限延長(3)中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置の拡充・延長(4)食事支給に係る所得税非課税限度額の見直し(5)インボイス制度の円滑な定着に向けた所要の措置(6)地域における生活環境の維持に必要なサービスを確保するための特例措置の検討――などが盛り込まれた。これらの改正項目について、ポイントを押さえておきたい。
「中小企業技術基盤強化税制」は、より多くの中小企業の研究開発投資を後押しする観点から「繰越税額控除制度(3年間)」を創設するとともに、この税制そのものの時限措置の適用期限を3年間延長する。
「事業承継税制」は、特例承継計画の提出期限を延長する。「法人版(特例措置)」の承継計画は27年9月末まで、「個人版事業承継税制」の承継計画は28年9月末まで、それぞれ提出期限を延長する。
「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置」については、現行「30万円未満」となっている即時一括償却が可能な単価上限額を「40万円未満」に引き上げるとともに、適用期限を3年間延長する。ただし、単価上限額は拡充されるものの、合計額については現行の「300万円」を据え置く。
「食事支給に係る所得税非課税限度額」については、現行の上限額である「税抜き月額3500円」を見直し、「同7500円」に引き上げる。
「インボイス制度の円滑な定着に向けた所要の措置」としては、免税事業者からの仕入に関する特例(8割控除)について、控除可能割合の引き下げペースと引下幅を緩和し、最終的な適用期限を31年9月末まで延長する。インボイス発行事業者となった小規模事業者に関する経過措置(2割特例)については、個人事業者の納税額を売上税額の3割とする経過措置を2年間講じる。
働き方改革の推進で従業員の権利意識が高まっているからか、過去の未払残業代をめぐる請求や裁判が増加している。会社にとっては理不尽に感じる請求もあるが、労働者の勤務時間管理が企業の義務である以上、会社側の責任が問われるケースが目立つのが現状だ。
未払残業代を支払った場合、法人税法上の損金算入時期は、支払方法にかかわらず「債務確定主義」に基づき判断される。具体的には、未払残業代の支払い義務が判決、和解、労働審判などで確定した日の属する事業年度の損金として一括で処理する。例えば、和解が成立したのが前期でも、実際に支払いが当期にずれ込んだ場合、損金にできるのは実際に支払った期ではなく、確定した日の属する前期だ。
さらに未払残業代は、その名目にかかわらず、全額が給与所得として取り扱われる。所得税が課されるのは、未払残業代を実際に支払った日が属する年だ。支払いの際には、会社は所得税と復興特別所得税を源泉徴収しなければならない。支払いを受けた従業員も、その年の年末調整で精算する必要がある。
未払残業代の支払いで、最も注意が必要なのが社会保険料だ。というのも、未払残業代は、原則として社会保険料の算定基礎に含まれるためだ。多額の未払残業代が支払われた場合、賃金の変動があったものとみなされ、過去にさかのぼって標準報酬月額の訂正を行わなければならないことがある。この際、会社と従業員の両者に、過去の期間にさかのぼって社会保険料の差額分を納める義務が発生してしまうというわけだ。
国税庁はこのほど、2025年分の所得税・復興特別所得税の確定申告書の様式等を公表した。25年度税制改正で創設された「特定親族特別控除」に関する欄が新設されたほか、「付表・明細書等」に「特定の基準所得金額の課税の特例に関する適用判定表兼税額計算書」が追加されている。
19歳以上23歳未満で合計所得金額が58万円超123万円以下の「特定親族」と生計を一にしている納税者は、特定親族の所得に応じて3万円から63万円を控除できる。この特定親族控除の創設に伴い、申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」に「特定親族特別控除」の欄、第二表の「配偶者や親族に関する事項」に「特親」の欄が新たに設けられた。
税制改正に関する変更としてはほかに、23年度税制改正での「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」に伴って、付表・明細書等に「特定の基準所得金額の課税の特例に関する適用判定表兼税額計算書」が追加された。25年分の確定申告から適用される同税制は、基準所得金額から3億3千万円を控除した金額の22.5%が基準所得税額を超える場合、超過金額に相当する所得税が課される措置で、「極めて高い水準の所得」の範疇に入ると税負担が増えることになる。新たに作成された「適用判定表兼税額計算書」は、制度の適用対象になるか否かの判定と税額計算をするための仕様となっている。
営業社員の自家用車を借りて会社の業務に使用し、車の維持に掛かる費用やガソリン代の全額を会社が負担した場合、基本的に給与課税の対象となるので注意が必要だ。
ただし、会社の業務に使用したことが明らかで、かつ1km当たりの走行費を合理的に算出したうえで実際の走行距離に基づいて維持費用やガソリン代を支払っているなら、その業務使用分について、所得税は非課税となる。営業日報などで走行距離をきちんと管理するなど証拠を残しておくようにしたい。
相続税の税務調査による追徴税額が過去最高となったことがわかった。実地調査に加えて、書面・電話での連絡や来署依頼にもとづき納税者と接触を図る「簡易な接触」がコロナ禍前の2倍に増え、追徴税額の増加につながったとみられる。相続税は申告件数に対して実地調査に至る割合がほかの税目と比べて高いため、準備不足が思わぬ税負担の増加につながる可能性がある。国税当局が常に不正に目を光らせていることからも、相続税調査の最新の傾向を確認しておきたい。
国税庁がこのほど発表した2024事務年度(24年7月~25年6月)の「相続税の調査等の状況」によると、相続税の本税・加算税を合わせた追徴税額は、実地調査が前年度比12.2%増の824億円、簡易な接触が同13%増の138億円で合計962億円となり、簡易な接触の事績の公表を始めた16年度以降で最高となった。実地調査の申告漏れ課税価格は同7.2%増の2942億円、1件当たりの申告漏れ課税価格は同3.6%減の3093万円、その追徴税額は同0.9%増の867万円だった。
実地調査件数は9512件で、前年度の8556件から11.2%増えたものの、コロナ禍前の18年度の1万2463件と比べると31%少ない。一方、簡易な接触は同1万8781件より17%増えた2万1969件で過去最高となった。1万332件だった18年度と比較すると2.1倍となる。18年度当時は実地調査の件数が簡易な接触の件数を上回っていたが、今では完全に逆転し、調査手法が様変わりしている実態がみてとれる。
簡易な接触は、税務調査の"効率化"を図る国税当局の姿勢を象徴的に示す調査手法といえるだろう。申告が必要と思われる納税者や計算誤りなどがあるとみられる納税者に対して行われている。国税当局が納税者との直接的な接触を避けていたコロナ禍に、実地調査の減少分の穴埋め策として簡易な接触は多用されてきた。だが、いまだに件数が減少するどころか、むしろ増加している。
簡易な接触がきっかけで発覚した申告漏れなどの非違は前年度の5079件から14.1%増えて5796件発覚している。申告漏れ課税価額は同954億円から17.8%増の1123億円、追徴税額は同122億円から13%増えて138億円。いずれも16年度以降で最高額となり、国税当局の"武器"として完全に定着したことがうかがえる。簡易な接触を多用することで、大口・悪質な事案を絞り込んで深度のある実地調査を行えるようになったほか、大口・悪質な事案以外にも効果的に対応できるようになり、相乗効果で追徴税額を押し上げたとみられる。
ほかの税目では、AIを活用した調査が定着してきているが、相続税の調査はこれから活用が本格化する。23年度以降に発生した相続事案からAIを活用して調査事案を選定しているものの、これをもとにして実地調査を行うのは、25年度からだという。法人税や所得税などの調査では、AIによるデータ分析などが調査の効率化につながっているとみられるため、国税当局は「相続税でも簡易な接触とあわせ、効率化につながるのではないか」と目論む。
相続税の場合、税務調査が入れば高い確率で申告漏れが指摘される。実地調査9512件のうち、申告漏れなどの非違があった件数は7826件で、非違割合は82.3%となっている。簡易な接触に加え、AIの活用で今後、調査官がさらに効率的で深度のある調査をするようになる可能性がある。相続を予定しているひとは、申告時に現金や預貯金などの相続財産の把握漏れがないかをきちんと確認するなど、事前の備えを万全にしておきたい。
製造業に限らず、企業は常に設備を新しいものに整え、発注者のニーズに応えていかなくてはならない。そのために金融機関から融資を受け、お金をまわし、利息をつけて返済する。ただ設備投資をしたところで、常に古くなった設備を適切に処理できることばかりではない。都合よく下取りに出せるとは限らず、また廃棄にはそれなりの費用もかかるため、どうしても「そのまま置いている」ということもある。
こうした際に、「有姿除却」という制度を覚えておきたい。これは読んで字のごとく「姿があっても除却したと同じこと」という意味で、その固定資産の帳簿価額から処分見込価額を控除した残額を、事実が生じた日の属する事業年度の「除却損」として損金額に算入できる仕組みだ。資金の支出を伴わない経費であるため、節税になる。
有姿除却は、生産効率を上げるために最新設備を導入した際に、廃棄していない古い資産の使用を廃止する制度だ。そのため、今後、通常の方法により事業で使う可能性がないと認められるものだけが該当する。重要なことは、当該資産が将来使用される可能性が絶対にないということを立証できるかで、ここが税務調査でも突かれやすい点となっている。外形からは判断が難しいものであれば、新規設備を導入した経緯や除却したときの見積書などの書類を残しておいたほうがいいだろう。
また、ソフトウエアについても同じ考え方ができる。物理的な除却、廃棄、消滅等がなくても、今後事業に使わない明白な事実があれば、ソフトウエアの帳簿価額から処分見込価額を控除した残額を損金額に算入できる。