自民党と日本維新の会の税制調査会は11月下旬の2日間、それぞれ総会を開き、2026年度税制改正に向けた議論を本格化させた。小野寺五典自民党税調会長は「高市政権になってから初の税制改正。投資の促進、賃上げ、物価への対応など重要な課題について税制面からしっかりと後押しすることが求められる」と意気込んだ。
高市早苗政権の発足後、自民税調のかたちは大きく変化した。旧大蔵省出身で財政規律を重んじることから「ラスボス」と呼ばれてきた宮沢洋一氏が税調会長から退任。消費税の減税に慎重な森山裕前幹事長も幹部会合である「インナー」のメンバーから外れた。代わりにインナーの経験がない小野寺氏が税調会長となり、「スタイルそのものをガラッと変えてほしい」とする高市首相の要望に沿った体制になった。
大きなテーマとなるのが、所得税の課税最低限である「年収の壁」を引き上げる制度設計についてだ。自民と国民民主党とでは、引き上げ方法について異なった考えがある。少数与党としては、国民民主など野党からの協力を取り付けなければならないため、与党税調が落としどころを見つけていく必要がある。
また、ガソリン・軽油の暫定税率廃止に伴う代替財源も大きな論点になりそうだ。自民や立憲民主党などの与野党6党は法人税関係の租税特別措置の見直しや、極めて高い所得者の負担の見直しなどについて25年末に「結論を得る」としている。ただ、廃止で失われる年1.5兆円分の代替財源のうち、どれだけの割合について方針を決められるかは不透明だ。
一方で、高市首相は投資促進に関する新たな税制に前向きな姿勢を見せている。現在は政権への支持率の高さから「政高党低」といえる状況だが、自民税調が政権とどのような距離感を測っていくのかも注目される。
毎年夏ごろに各省庁は税制改正要望をまとめ、これを基にして与党が12月、翌年度の税制改正法の原案「税制改正大綱」を公表する。政府は大綱に基づき年明けの国会に改正法案を提出し、国会を通過した法律が4月1日に施行される。これが税制改正の通常のスケジュールだ。
想定されていなかったようなトラブルが起きればこのスケジュールが狂うこともある。例えば2011年には、国会で改正法が審議中だった3月11日に東日本大震災が発生し、審議は完全にストップすることとなった。その後、3月末にいったん"つなぎ"の改正法を成立させた後、被災地の状況などを見ながら改正議論を再開。結局、6月と11月の2度に分けて正式に関連法を成立させた後も、震災の復興財源などに関わる税の特別法が11月と12月にも成立するという異例の進行となった。