東京都は7月3日、文京区内にある土地・家屋の旧所有者に対して、誤って固定資産税などを課税していた、と発表した。固定資産税や都市計画税は、その年の1月1日現在の所有者に課税される仕組み。今回のケースでは2024年中に所有者が変更されていたのに、以前の所有者74人に固定資産税などを課税しており、このうち21人はすでに納付を済ませてしまっていたという。東京都主税局によると、東京法務局が登記情報の変更を都に伝えていなかったことが原因だという。都では課税の取り消しと、納付済みの税金を返還する手続きを行っている。また、本来の所有者に対しては、経緯を説明したうえで、あらためて課税する予定だとしている。
東京都主税局が同日発表した「東京法務局からの登記通知漏れに伴う固定資産税等の納税通知書の送付誤りについて」によると、東京法務局は土地・建物の所有権変更登記があった場合、地方税法に基づいて10日以内にその旨を都に伝えなければならないが、都では通知を受けていなかったという。
このため、文京都税事務所が6月2日に送付した「納税通知書」は、本来の所有者ではなく旧所有者へ届くこととなり、誤って課税してしまったという。旧所有者からの問い合わせを受けた都が調べたところ、24年中に所有権を変更した74人に固定資産税と都市計画税を誤って課税していたことが判明した。都では東京法務局に対して、登記情報の適正な通知と再発防止についての申し入れを行ったとしている。
地方税法第382条では「登記所は、土地又は建物の表示に関する登記をしたときは、10日以内に、その旨その他総務省令で定める事項を当該土地又は家屋の所在地の市町村に通知しなければならない」と定めている。
総務省によると、個人が居住地の自治体に納める住民税の税収は全国で約14兆円に上り、地方税の約3割を占める。法人住民税が約2.5兆円であることをみても、個人住民税は地方自治体にとって大きな財源となっている。取りこぼしのないよう担当部署は常に目を光らせているということだ。
課税対象は1月1日時点での住民であるため、たとえ1月2日に死亡して、以降は自治体からの一切のサービスを受けられなくても、その年の税金はかかる。仮に12月31日に熊本市に住んでいたが、1月1日に横浜市に居を移し、1日だけ暮らして、翌日以降は札幌市に移ったときは、その年の住民税は1日だけ過ごした横浜市ということになる。
そして住民が年度の途中に死亡したときには、相続人が納税義務を受け継ぎ、納付することが求められる。なお、死亡した当日はカウントされないので、1月2日の死亡から対象となる。
もちろん、相続放棄をすれば相続人に納税義務が引き継がれることはない。手続きとしては、相続放棄をした人は家庭裁判所が発行する「相続放棄申述受理通知書」の写しを市区町村に提出することで納税しないで済む。
こうした手続きを取らないと住民税を滞納したと取り扱われ、ペナルティーとして延滞金の対象にもなるので注意したい。
国税庁は7月1日、相続税や贈与税の算定基準となる2025年分の路線価(1月1日時点)、いわゆる“相続税路線価”を発表した。全国約31万8千地点を調査して算出したもの。標準宅地の評価基準額は全国平均で前年比2.7%上昇した。上昇は4年連続。現在の算出方法となった10年以降では最大の伸び率となり、2年連続で過去最大を更新した。
路線価の最高額は東京・銀座の「鳩居堂」前で、1平方メートル当たり4808万円。40年連続のトップで前年比8.7%上昇し、過去最高を更新した。
少し前までは会社の“稼ぎ頭”としてフル稼働していた機械設備であっても、時代の流れとともに使用頻度は減り、いまではまったく使わなくなって工場の片隅でホコリをかぶっているということもあるだろう。解体や廃棄をしてスッキリしたいが、その費用の捻出は難しい。
そうした場合に使いたいのが法人税の「有姿除却」だ。読んで字のごとく、廃棄せずに姿はそのままでも、除却損を計上できる。昔からある制度だが、一躍注目を浴びたのが2011年の東日本大震災による原発事故だ。東京電力福島第一原発の爆発事故では、地域住民の多くが避難を余儀なくされたが、それは企業の社屋や工場も同様だった。放射能汚染されて今後は使い物にならなくなった建物は解体も困難であることから、ほとんどが放置された。そうした固定資産の多くで有姿除却が認められ、税務上の損失が計上された。
有姿除却は、日常の企業活動のなかで生まれた放置資産についても使える制度だ。とはいえ、税務署が有姿除却を認める際のチェックは厳重で、社長の「もう使わないつもり」といった程度の理由ではまず認められない。国税庁のウェブサイトには「特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの」と例示されており、放射能汚染ほどの大事でないにしても、税務職員を納得させるには相応の理由が必要だ。「実は大量受注があったときに稼動してしまった」「たまに古い商品の修理依頼がくると使っている」など、完全不要でないと見られれば容赦なく否認されるので注意したい。
不要資産を抱え込んでいる会社にとってはなんともありがたい制度だが、実際には廃棄していないものを帳簿上「廃棄した」ことにする以上、それなりの体裁を整える努力は必要になるということだ。
国税不服審判所は6月20日、2024年度の「審査請求の概要」を公表した。「審査請求」は、税務署長や国税局長が行った処分に不服がある場合、その処分の取消しや変更を求めて、国税不服審判所長に対して不服を申し立てる制度。国税不服審判所長に対する審査請求は、再調査の請求を経ずに直接行うことができる。また、再調査の請求を行った場合でも、再調査の請求についての決定(再調査決定)後の処分になお不服がある場合に行うことができる。
24年度の審査請求の件数は前年度比9.7%減の3537件だった。前年度からの繰り越し事案を含めた処理件数は3872件で、このうち納税者の請求がなんらかのかたちで受け入れられた件数(認容件数)は693件(一部認容522件・全部認容171件)、その割合は17.9%となっている。24年度中の「1年以内の処理件数」の割合は99.4%だった。
寺社が本堂や庫裏などの改修工事を行う際には、檀家から工事費用の寄付を募ることがある。檀家としても、ご先祖が眠る寺社を粗末にするわけにもいかず、無下に断るのは気が引ける。もちろん生活に支障が出るほどの金額は出すべきではないが、あまりに少額ではみっともないと感じる人もいるだろう。喜んでするわけではなくても、世の習いとして断りにくい出費はせめて寄付金控除として申告したい。
この寄付が控除の対象になるかどうかのポイントは、その寺社が宗教法人として登記しているかどうかによる。登記することで公益法人として扱われ、その寄付が広く一般に募集され、教育や科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献など、「公益の増進」に寄与するための支出であると財務大臣が認めれば、寄付金控除の対象となる。宗教施設とはいえ、すべての寄付が控除対象ではないので覚えておきたい。