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2020年3号(2022/1/21)

<タックスニュース>パートナーシップ構築宣言が賃上げ税制の要件に  下請けイジメ対策に期待

 政府は中小企業などが取引先から不当な取引や対応を強いられることを防ぐ「下請け対策」を強化している。このうちの一つに、企業に取引適正化に努めることを宣言してもらう「パートナーシップ構築宣言」の仕組みがある。2022年度税制改正で強化された「賃上げ税制」で優遇が受けられる要件としても盛り込まれるなど、この宣言の広がりを促す流れが強まってきている。

 経済状況が悪化すると、大企業などの元請け企業が中小企業などの下請け企業に対し取引価格の引き下げを行うことなどが起きやすくなる。新型コロナ禍でそうしたことを防ぐためとして政府や経済団体は20年6月、不当な取引をしないことやサプライチェーン全体での協力関係を強化するなどといったことを企業に公式に宣言してもらう「パートナーシップ構築宣言」の仕組みを創設した。宣言は例えば「価格の決定方法について不合理な原価の値下げ要請は行わない。取引価格の決定に当たっては、下請け企業から協議の申入れがあった場合には協議に応じる」といった内容で、各企業の宣言内容は専用ポータルサイト上で公表される。宣言数は徐々に増えてきており、22年1月時点で4600社以上となっている。

 取り組みは機運醸成が目的で、宣言後に国が監督や指摘をすることはないが、事業再構築補助金やものづくり補助金などの審査で加点措置が受けられるというメリットもある。また、22年度税制改正においては、賃上げにより税制優遇が受けられる「賃上げ税制」を大企業が利用する際の要件にも含まれることとなった。宣言をしている企業のうち大企業は1割にとどまっていることから、国は制度活用を促したい考えだ。

 一方では拘束力のない制度だけに、「政府は宣言内容を守っていない企業名を公表してほしい」などと、中小企業団体などからは実効性を担保するよう求める声も上がっている。


<タックスワンポイント>相続情報証明書に放棄した家族は反映されず  諸々の手続きに利用が可能

 法定相続情報証明制度は、相続手続の際に必要となるさまざまな情報を紙1枚にまとめることができる制度のことだ。2017年にスタートし、今では税務申告といった役所の手続きだけでなく、金融機関での口座解約の際にも使えるようになっている。

 かつて親や配偶者が死亡したときには、相続人は不動産登記の変更や相続税の申告、銀行口座の解約などのため、大量の戸籍書類一式をそろえて、相続対象となる不動産を管轄する各自治体の法務局や預金などのある金融機関ごとに提出しなければならなかった。そこで相続情報証明書制度では、全国の登記所のいずれかに相続人全員分の本籍、住所、生年月日、続柄、法定相続分などの情報をそろえて提出すれば、偽造防止措置が施された法定相続情報の一覧図の写しが発行されることとなった。以降の手続きは法務省の発行する写しを利用すれば各種の手続きにかかる手間が省けるわけだ。

 証明書には決まった書式などはなく、被相続人と法定相続人全員の関係がひと目で分かるよう相続人自身が一覧図を作成し、それを法務局で確認してもらう形となる。この際、それぞれの住所は任意記載とされているものの、証明書を様々な手続きで利用していくことを考えると、住所もあったほうが便利だろう。また証明書に記載される被相続人と相続人の関係については、「長男」「長女」「養子」でなく、大まかに「子」としても証明書として不備はないが、こと相続税申告の添付書類として使うつもりなら、なるべく詳しい間柄を記載するようにしたい。

 証明書を活用する上で覚えておきたいのが、証明書は戸籍謄本に基づいて内容の正しさを保証するものなので、戸籍のない人、つまり日本国籍を持たない外国人などが関係者にいる時は、証明書を利用することはできないという点だ。さらに相続人のなかに相続放棄をした人がいても、証明書の一覧図では他の人同様、通常の法定相続人として記載されてしまうため、そうしたケースでも証明書を使うことができない。いろいろと便利な制度だが、万能ではないということを頭に入れておきたい。

2020年2号(2022/1/14)

<タックスニュース>税務調査が厳格化  「後出し経費」が不可に

 2021年12月24日に閣議決定した22年度税制改正大綱では、税務調査での「後出し経費」の規制が見直された。また帳簿の不備に対して追徴課税を上乗せするペナルティーも盛り込まれ、納税者にとってはさらに税務調査が厳しくなることを意味する。

 税務調査の場面では、仮装・隠蔽や無申告を指摘された納税者が、それまで申告していなかった簿外経費を持ち出して所得を減らそうとする“後出し”をすることが少なくなかった。

 こうした簿外経費を大綱では、「適正な記帳や申告が行われていない納税者については、真実の所得把握に係る税務当局の執行コストが多大で、行政制裁を適用する際の立証に困難を伴う」として、簿外経費の“後出し”で「悪質な納税者を利するような事例も生じている」ことから、厳格化に踏み切った。23年からは、仮装・隠蔽・無申告のいずれかがあった年の確定申告書に記載されなかった経費については、帳簿書類などにより費用が生じたこと、支出先の相手先が明らかであり反面調査によって支出が確かめられることなどの条件を満たす場合を除いては、原則として損金にできないこととされた。

 また過少申告加算税および無申告加算税については、税務調査時に調査官から求められた帳簿を提出できなかったり、売上金額や収入金額の記帳が不十分だったりしたときには、通常の過少申告加算税や無申告加算税の額に、ペナルティーが加算される見直しが盛り込まれた。

 具体的には、帳簿を提出できないか、提出したとしても売上金額または収入金額の2分の1以上が記載されていなかったときには本則の加算税に10%が上乗せされる。たとえ提出したとしても、売上金額または収入金額の3分の1以上が記載されていなかったときは5%が上乗せされるというもの。24年1月以降に法定申告期限が到来する国税に適用される。


<タックスワンポイント>消費税の還付請求に当局の目  入金後は高確率で調査?

 税務当局は消費税の調査にこれまで以上に力を入れている。2019年に消費税率が本則10%に引き上げられて還付を受ける際の“利ざや”が増えたことで、悪質な不正還付が絶えないためだ。また故意でなくとも仕入税額控除の計算ミスは多く、実に調査に入ったほぼ半数が何らかの非違を指摘されているという。

 特に、消費税の還付は、国側からすればせっかく集めた税金を持っていかれる制度だけに、税務署のチェックも厳しい。還付申告の際は一分の隙もないよう十分に気を付けたい。

 消費税の還付申告では、「消費税の還付申告に関する明細書」を作成することになる。この明細書には、還付になった「主な理由」を書き込む欄がある。「固定資産の購入」か「免税取引の割合が高い」または「その他」を選ぶことになるが、「その他」の場合、空欄のまま出すのは絶対に避けたい。なぜなら、必ずといっていいほど税務署側の入念な“確認”を受けるためだ。

 税務署に照会を求められたとき、あいまいな理由や空欄ではスムーズに還付が受けられない可能性がある。気になるのは、この還付申告による税務署側からの接触だ。本格的な税務調査になってしまう場合と、簡単な書類チェックだけで済んでしまう場合がある。還付がすんなり受けられたからといって油断は禁物だ。還付後に税務調査になるケースも多々ある。

 税務調査に発展するかどうかは、前回調査を受けてからの間隔と、還付の額によるところが大きいが、還付の理由に関する請求書などはすぐに示せるようにしておくことが肝要だ。還付額が大きければ、会社の資金繰りに充てたいところ。その際は早めの申告を心掛けたい。

2020年1号(2022/1/7)

<タックスニュース>自然災害の準備金  無税枠10%に拡充

 損害保険会社が大規模自然災害に備えて積み立てる「異常危険準備金」について、無税で積み立てられる割合が現行の6%から10%に引き上げられる。12月10日に決定した2022年度税制改正大綱に盛り込まれた。自然災害が多発していることを受け、将来の円滑な支払いのため税制により積み立てを促す。

 異常危険準備金は損保会社が保険料収入の一部を将来の支払いに備えて積み立てているもので、積立金は法人税の課税対象となっている。現行制度では、保険料収入のうち本則の2%に特例として4%を上乗せした6%を無税で積み立てられるようになっている。

 一方で、地球温暖化などを受けた近年の大規模災害の多発により積立金は減少し、損保業界は無税枠の拡充を要望していた。日本損害保険協会によると、18年7月の豪雨災害や翌19年の関東・東北を中心とした台風19号による被害で、支払った保険金の額は2年連続で1兆円を超えた。こうしたことを受けて将来の支払いに支障が生じる事態を防ぐため、今回の税制改正では22年度から3年間の時限措置として、台風、洪水といった風水害、火災を対象に、無税で積み立てられる割合を6%から10%に引き上げる。

 特例が適用されるのは、無税で積み立てる準備金の残高が年度の保険料収入の30%に達するまで。損保業界はこの上限を40%に拡充することも要望していたが、上限は維持された。


<タックスワンポイント>国税当局も注視するメルカリ所得  税務調査は1年間で200件超

 メルカリやヤフーといったネットオークションの市場規模は、経済産業省の調査によれば1兆円を超えるという。雑貨や古本だけでなく貴金属や自動車などの高級品が売られていることも珍しくなく、捨てるよりマシとネットオークションを利用して不要になった日用品を売った経験のある人も少なくないだろう。スマホアプリなどから簡単に売買のやり取りができる気軽さもあり、その市場規模はさらに拡大しつつある。

 ネットオークションであろうがフリーマーケットであろうが、一定の儲けが出ているのなら確定申告を行い、所得に応じた税金を納めなければならない。ただし例外もあり、実際にはネットオークションで出品者となった経験のあるほとんどの人が以下のルールに該当するはずだ。

 「資産の譲渡のうち、家具、じゅう器(家庭用の道具)、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の売却については、所得税を課さない」

 つまり日用品の処分としてオークションを使っている分には、それがいくらで売れようが、所得税を課されることはない。ただしオークションで売ることを前提として商品を仕入れたり、継続的に物を売って利益を得たりしていると、税務署から否認される可能性はないとは言えない。なお、「貴金属や宝石、書画、骨董(こっとう)など、1個あるいは1組が30万円を超えるもの」の売却は譲渡所得が発生するという規定もあるので、家にあるものなら何でも非課税というわけではないことを覚えておきたい。

 気になるのは、原則として非課税である通勤用の車が、金額基準の30万円を超える額で売れた時はどうなるかということ。そこは30万円超であっても通勤用のマイカーであれば非課税だが、フェラーリやベントレーといった高級車であれば通勤用に使っていたとしてもぜいたく品として課税する、という運用がされているようだ。

 市場が大きくなるということは、そこに『儲け』があることを意味するわけで、ネットオークションによる所得には課税当局の目が光っていることも忘れてはならない。各国税局にはインターネット取引を担当する「電子商取引専門調査チーム」という専担部署があり、メルカリやヤフオクといったネットオークションで生じた所得を捕捉しようと日々監視を続けている。2020年度には、コロナ禍で税務調査が減少するなかでもネットオークションを対象に208件の税務調査が実施された。

 もっともメルカリなどで日常的に利益を上げていても、よほどの“人気業者”でなければ税務調査は来ないかもしれない。ネットオークション絡みで税務調査を受けた約200人の1件当たりの申告漏れ所得金額は1166万円だという。