国内投資の拡大促進に向け、政府・与党は新たな減税措置の創設について検討を進める。政府は11月10日、高市早苗政権下での経済政策を議論する「日本成長戦略会議」の初会合を開き、設備投資促進につながる税制創設を重点施策に盛り込んだ。投資額の一定割合を法人税額から差し引く「税額控除」や、投資の初年度に減価償却費を一括計上できる「即時償却」の導入などが想定されている。経済産業省が8月の税制改正要望で同様の趣旨の内容を提案していた。
高市首相は同日の衆院予算委員会で、この税制で想定される業界として「造船、航空、宇宙など」を挙げた。こうした産業分野では「リスク低減や社会課題解決のために新たな需要が存在するなかで、十分な供給力が培われていない」とし、「(税制の創設が)戦略投資を強力に引き出す極めて有効な支援策になると思っている」と主張した。また、「設備投資を行う企業のキャッシュフロー改善が見込まれ、政府による投資促進策として欧米各国でも同様の制度が導入されている」とも述べた。
一方で、新たな制度の導入に伴う減収額の規模や代替財源の方向性は不透明だ。「責任ある積極財政」を掲げる高市政権だが、拡張的な財政政策を続ければ、市場からの信認にも影響する。政府関係者からは「補助金政策と変わらないのではないか」と疑問の声も上がる。また、政府はこれまでも投資促進に関する税優遇措置を実施してきたが、企業の内部留保は2024年度に過去最高を更新している。新たな税制をどれだけ企業の投資活動につなげられるか、綿密な制度設計が求められる。
財産を受け取るべき人がいない場合や、相続人がいても全員が相続放棄をした場合、故人の財産は「相続人不存在」として法人化され、独立した人格を持つ。これによって第三者が勝手に処分等をすることはできなくなる。
そうなると、仮に故人に金を貸していた場合でも勝手に財産から抜き取ることはできないため、債権者は利害関係人として家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てなくてはならない。
相続財産管理人とは、相続財産の管理や保存に関する権限を持つ者で、一般的に弁護士などの専門家が家裁で選ばれることが多い。相続財産管理人は、被相続人に対する債権者や受遺者に対して、2カ月以上の期間を定めて請求の申出をすべきことを公告する。債権者や受遺者は、相続財産管理人に請求の申出をすれば、相続財産法人の財産から弁済を受けることになるという流れだ。
なお、法定相続人がいない被相続人が残した財産は、被相続人と生計をともにしていた人や被相続人の療養看護に努めた人が「特別縁故者」として受け取ることもできる。ただ、被相続人の療養看護をしていた人が裁判所に「特別縁故者」と認めてもらうには、療養看護の日記などの証拠資料を残しておく必要があるだろう。近所で「ちょっと仲が良かった」という程度では特別縁故者と認められるのは難しいようだ。
そして特別縁故者が誰もいなかったときや、特別縁故者に財産の一部が分与されてもまだ財産が残った場合は、国庫に帰属することになる。特定の個人や団体に財産を残したいという希望があれば、遺言や生前贈与などを検討するのがよいだろう。
高市早苗首相の外交デビューの相手として、アメリカのトランプ大統領が来日した。注目されたのが高市首相の"接待"だ。これを中小事業者に置き換えて考えてみれば、過大な接待費用の計上は税務署に「税逃れ」とみなされるおそれがあるので注意が必要となる。高市首相の接待外交を基に、中小事業者の接待に関する税務上のルールを整理しておきたい。
取引先との接触の機会が多い役員や営業社員によく知られているのが、飲食費の「1万円基準」だ。1人当たり1万円以下の飲食なら、損金算入が制限される「交際費」ではなく、「飲食費」に計上し、その年に支払った全額を損金にできる。もし1人当たりの料金が基準を超えそうなら、別の飲食店に移動して2次会や3次会を開催すれば、それぞれの店での1人1万円までの支払いが損金になる。
飲食費が1万円を超えると、損金にできるのは1年当たり一定額までに限られる。具体的には、接待飲食費を含む交際費の800万円以下の部分か、または接待飲食費の半額であれば経費にすることが認められている。飲食だけで年間1600万円を超えるなら、その半額をすべて損金に算入することができる。経費化が可能な交際費の範囲は幅広く、飲食費のほかに、観劇や旅行の費用、冠婚葬祭費、お中元などの贈答品代が含まれる。高市首相はトランプ氏にゴルフバッグや金箔を施したゴルフボールを贈ったが、税務上はそれらの費用も一定額までは損金にできることになる。また、飲食店やゴルフ場などに得意先を送るための交通費も経費に計上することが可能だ。送迎にはハイヤーやタクシーを使っても問題ない。
ただ、税務署は、その中に本来は役員や社員が個人の財布から支出すべきものがあるか否かということを必ずチェックするので注意しなければならない。個人が支出するはずの交際費を会社が肩代わりしているなら、税務上はそのひとへの給与として会計処理し、社員や役員に所得税が課税されることになる。
役員が負担するべき交際費を会社が肩代わりすると、臨時的に支給される役員報酬とみなされ、会社の損金にできない。もし交際費として損金算入してしまえば、法人税額を本来より過少に申告したことになり、追徴課税の対象となる。また役員報酬の支払いの際には源泉徴収の義務が生じるので、交際費処理していると源泉徴収漏れが発生することになる。税務署に否認されないためには、プライベートの飲食を交際費に計上しないのは当然として、仕事上で必要な支出であることを証拠として残しておくようにしたい。
名義株とは、株式の名義上の所有者が誰であれ、実質的な所有者がほかにいるのであれば、真の所有者は後者であるとみなされる株式のことだ。
過去の判例によれば株式取得資金の出資者、名義人と引受人の関係、取得後の配当金の帰属状況などをもって名義株か否かは総合的に判断されるという。過去には、創業者の遺族が所有する自社株が実質的に創業者の「名義株」であるとして、80億円超の相続財産の申告漏れを指摘されたケースもあり、相続税対策を考えるうえでは外すことのできない重要テーマだ。
名義株が生まれるパターンとしては、創業時に形としての株主をそろえるために親族や知人などに声をかけて実際の取得資金は経営者自身が出すというようなケースや、まだ幼い子や孫などに自社株を持たせるために親が資金を負担するというようなケースがある。そして名義株問題が放置されがちな理由としては、一見しただけでは実質的な保有者と名義の違いは分からないため、税理士などが問題を指摘することが難しいという事実があるだろう。
名義株問題を解消するには、相続が発生する前に株式を実質上の保有者の元に集約しておくことが一番だが、スムーズに集約が進まない事も考えられる。たとえ株式の取得資金を負担したのが自分であろうとも、株式の名義を書き換える際には、名義上の所有者に了解を得なければならない。
順調に了解を得て名義の書き換えが進めば何の問題もないが、相手が株主としての権利を主張してきたり、書き換えを拒否してきたりすれば、交渉を経て相手に書き換えを納得してもらうことになるだろう。最悪の場合は裁判沙汰になる可能性もゼロではなく、説得するにせよ法廷で争うにせよ時間がかかることを踏まえ、一刻も早い問題の認識と解消への取り組みが求められる。
自民党の税制調査会が2026年度税制改正に向けた協議をスタートさせた。幹部会合である「インナー」のメンバーは半数ほどが交代となり、その顔ぶれにも"高市カラー"がにじんだ。
自民税調はこれまで、インナーに入る一部の幹部が事実上の決定権を持つ独特な運営がなされてきた。前会長の宮沢洋一氏は旧大蔵省出身で、減税には恒久的な財源が必要との姿勢を示すなど自民党内でも存在感を保ってきた。
今回は、半数ほどのメンバーが入れ替わった。会長は初の税調入りとなった小野寺五典前政調会長。税調ナンバー2に当たる小委員長には山際大志郎元経済再生担当相が就任したほか、西村康稔元経済産業相もインナー入りした。山際氏は旧統一教会との関係、西村氏は旧安部派の幹部として派閥裏金問題への関与などが取りざたされた元閣僚だが、経済成長を重視する高市首相の姿勢にはマッチした人選となったようだ。
自民税調に与えられる課題は今年も多々ある。ガソリン税の暫定税率廃止に向けた議論のほか、「年収の壁」をめぐる公明、国民民主との協議、自動車関連税制の見直しなど、いずれも国民生活に密接に関わる課題だ。宮沢氏と同じ旧大蔵省出身の後藤茂之元経済再生担当相は小委員長から「小委員長代理」に事実上降格したものの、これまでの与野党協議に関わっていた経緯もあり、インナーには今後も加わる。
インナーの初回会合後、小野寺税調会長は「今までは税の専門家という括りで税調が行われていたかもしれないが、むしろ国民目線で開かれた税調というのが高市首相の考えだ。決して税(の議論)を長年やってきていなくても、私どもの暮らしに直結する各分野の専門家に入ってもらった」と述べている。
30年の一括借り上げで、老後の暮らしも相続税も安心。こうした売り文句に釣られて遊休地に賃貸アパートを建てたはずが、最終的に入居者が集まらずに土地や建物、さらには自宅まで失うというトラブルが後を絶たない。
サブリースを行っている不動産会社は、土地持ちのオーナーから土地や建物などをサブリース契約で借り上げ、アパートの運営や管理のすべてを引き受ける。実際の入居者の入居率でなく、サブリース会社が一括して借り上げてくれるという安心感や、相続税負担を抑える税金対策としても全国的に広まった。
ただ気を付けなければならないのは、家賃は30年間ずっと一定の金額が支払われるわけではないということ。サブリース契約書には大抵「入居状況、近隣家賃相場、経済状況と地域需要に応じて、随時に変動増減する」といった旨の条項が書かれている。
うまく入居者が入っているときは家賃も順調に振り込まれてくるだろう。しかし、いったん空室が出れば、サブリース会社は契約内容の変更を強硬に迫ってくる。全国で頻発するサブリースのトラブルを受け、家賃減額などについて前もって説明しておくことを義務付けるサブリース法が成立したのは2020年のことだが、その後もサブリースをめぐるトラブルは発生し続けている。