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2023年35号(2023/9/21)

<タックスニュース>コロナ給付金の不正受給  リーダー格に懲役5年の求刑

 東京国税局元職員らのグループによる国の新型コロナウイルス対策の持続化給付金詐取事件で、詐欺罪に問われたリーダー格とされる無職松江大樹被告(32)の公判が東京地裁で開かれ、検察側は懲役5年を求刑した。同事件を巡ってはすでに元国税局職員や大和証券元社員など、複数の被告に有罪判決が言い渡されている。

 松江被告は暗号資産の投資事業「マイニングエクスプレス」の会員だった2020年、別の会員に持続化給付金を不正受給させ、手数料を徴収する仕組みを考案した。同年7~8月に7回にわたり虚偽の給付申請をし、計700万円をだまし取ったとされている。グループは約200人分、計約2億円の不正受給に関与したとみられている。

 昨年11月に懲役3年、執行猶予5年の有罪判決を受けた元東京国税局職員の塚本晃平被告は、20~30件の確定申告書を偽造し、地元の友人に対しても虚偽申請を持ちかけ、「怪しい話じゃない。おれは国税だから大丈夫」などと声をかけていたという。判決では「国税局職員の立場からして、あるまじき犯罪に手を染めた」と指摘された。

<タックスワンポイント>異なる耐用年数をグループ化して償却  煩雑な処理を簡略化

 減価償却の計算は、資産ごとに決められた法定耐用年数に応じて損金に算入するのが原則だが、耐用年数が異なる機械などであっても性質や用途が共通しているものはグループとして一括で減価償却計算をすることも認められている。

 仮に耐用年数10年の機械の価格が1200万円、7年のものが700万円、4年のものが200万円だとして、それらが一つの生産ラインを構成するなど一体となっているなら、同じ期間でまとめて償却することも可能となる。具体的な償却方法は、全ての機械の価格の合計額2100万円を、それぞれの年間償却額(120万円、100万円、50万円)の合計額である270万円で割って算出した7(端数は切り捨て)を償却期間とする。すなわち全ての設備をまとめて7年間で300万円(2100万円÷7)ずつ償却できるということだ。

 余談だが、耐用年数が最も長く設定されているのは水道用ダム(鉄筋鉄骨コンクリート造)で80年、次点がトンネル(同)で75年となっている。鉄筋(鉄骨)コンクリートの事業所は50年。同じ構造でも住居であれば47年だ。機械および装置に限ると電気業用水力発電設備と鋳鉄製導管が22年で最長。普段注目しないものでは、学校の滑り台は10年、魚は2年、鳥は4年、将棋盤は5年、温州みかんは28年、乳用牛は4年、競争用の馬も4年、ビリヤード台は8年などとなっている。

2023年34号(2023/9/14)

<タックスニュース>東京国税局が「J-CAP」を10月スタート  税務リスクを事前相談

 東京国税局は10月1日、過去にない商取引を行う企業からの税務リスクに関する事前相談を受ける「J-CAP」制度を開始する。従来の事前照会制度などと比べて、スピーディーに回答を受け取れる点が特徴だ。ただし対象は資本金40億円以上の大企業となっている。

 J-CAPを利用できるのは、東京国税局管内かつ、調査部の特別国税調査官が所管する資本金40億円以上の大企業、いわゆる「特官所掌法人」の約300社。前例のない新たな取引について、具体的な取引資料などを基に、法人税と消費税に関して相談ができるという。回答まで半年かかることも珍しくなかった従来の文書照会制度などに比べて、営業日ベースで45日以内に回答が得られるという点が強みだ。

 東京局としては、新興国への進出や海外企業を交えたM&Aなど、主に国外取引を想定しているという。企業にとっては後から税務処理を否認されてトラブルとなるリスクを防止できるというメリットがある。

 今後、対象企業を拡大していくかなどは未定で、ある関係者は「実際にどれくらいの相談ニーズがあるのかも含めて、まず始めてみて、走り出してから様子を見ていくという形になるだろう」と話す。

<タックスワンポイント>太陽光発電は家屋と一体なら償却資産税  東京都が設置を義務化

 昨年12月、東京都が、2025年4月以降に都内に新築される住宅に太陽光発電パネルの設置を義務付ける条例を可決した。今後はマイホームを含む不動産オーナーは望むと望まないとにかかわらず、太陽光発電によって得られる利益やランニングコストなどの負担を検討する事が必須となる。

 税金についても考えなくてはならない。太陽光発電で一定の利益が出れば所得税や法人税を納める必要が出てくるのはもちろんのこと、設備を維持する上でも所有者には税負担が課される可能性がある。

 原則として、太陽光発電を行うために必要な装置には、償却資産税がかかる。すでに太陽光発電パネルを設置していても、これを申告していない人は意外に多い。理由として、そもそも太陽光発電の設備が償却資産に該当することを知らないようだ。個人事業主や法人は、設置した設備のワット数に関係なく全てが償却資産税の対象となるが、業務用だけでなく個人用であっても、電力が10キロワット以上になると売電事業用資産として扱われ、償却資産税を支払う必要が生じる。

 そして個人宅に太陽光発電設備を設置しているケースで注意したいのが、発電設備が家屋と一体化しているかどうかだ。一体化していれば「ソーラーパネル」と「架台」は家屋として固定資産税が課税される一方、その他の機器は償却資産として課税される。発電設備を架台に乗せて屋根に設置しているのであれば、ソーラーパネルを含めてすべてが償却資産と判定される。つまり、発電設備と家屋が一体化しているケースでのみ、発電設備に固定資産税を課される可能性が生じる。

2023年33号(2023/9/7)

<タックスニュース>信託型ストックオプション  “大増税”で特別損失14億円も

 株式報酬の一種である信託型ストックオプション(信託型SO)の課税処理を巡り、人口知能開発のパークシャテクノロジーは8月14日、2022年10月~23年6月期の連結決算で14億円の特別損失を計上した。国税庁が信託型SOについて、企業が想定していたものと異なる税務処理を示したことが理由だ。

 SOは新株予約権の中で株式購入権と呼ばれ、事前に決めた「権利行使価格」で株式を購入できる権利を指す。なかでも信託型SOは、企業側が発行した全てのSOを一旦、信託会社が購入して預かり、企業側は成果や貢献度に応じて役員や従業員らに交付する仕組みだ。

 信託型SOにつき、これまでの一部の企業では信託会社が有償でSOを購入していることから有償SOを想定し、譲渡所得(税率20%)と考えていた。しかし今年5月、国税庁は信託型SOの取り扱いについて、「会社からの報酬と認められることから給与課税(税率最大55%)の対象と考えている」との見解を示した。国税庁によれば、これまでも問い合わせがあった時には「給与課税の対象になる」と説明してきたというが、統一した見解をホームページなどで明示したことがなかったため、誤解が解ける機会がなかった。

 パークシャ社もこれまでは、信託型SOを行使して株式を売却した従業員には20%の所得税がかかると想定してきた。しかし国税庁の見解を受け、給与として課税されることになると地方税を含めて最大55%の税金がかかることになる。

 同社はこれを受け、新たに源泉所得税を納付するとともに、本来は従業員が負担する所得税についても、全額を会社が負担することを決めた。「これまでの役職員等とのコミュニケーションや信託型SOの導入経緯を踏まえ、(中略)求償権の一部を放棄する判断をいたしました」としている。同日発表した22年10月~23年6月期の連結決算では、信託型SOに絡む14億6654万4千円の特損計上が響き、最終損益は5億円の赤字となった。なお同社は「本信託SO対応については今回をもって完了し、今後も信託型SOの活用の予定はない」という。

 信託型SOを巡っては、クラウドサービスを提供するSansanやAIを手掛けるJDSCなどもすでに特別損失を計上しているほか、上場新興企業13社が訴訟を検討しているとの報道もある。

<タックスワンポイント>リモートワークの労災の認定条件  原則として適用だが判断はあくまで労基署

 仕事中に椅子から滑り落ちてケガをした際、それが会社内であれば通常は何の疑いもなく労災が認定される。会社側による安全配慮義務違反などが問われるためだ。

 ではコロナ禍で急増したリモートワーク中はどうかというと、「業務上」であれば会社内と同様に原則として労災が適用されることになる。厚生労働省の「テレワーク導入ための労務管理等Q&A集」によると、「自宅でトイレに行くため作業場所を離席した後、作業場所に戻り椅子に座ろうとして転倒した」という例が挙げられ、これも業務災害の適用になることが明記されている。

 一方で、労災は業務に起因する災害であることが条件のため、たとえ業務時間中であっても食事や育児、洗濯など、私的行為によるケガは認められない。

 ただ業務に起因するケガであることの証明については、状況を録画しているなどの物的証拠がなければ、労働者が労災であることを明らかにするのは難しい。同時に会社としては、労働者の訴えに対し、認めるかどうかの判断を迫られ、「怪しい」と感じたときは主張を却下することもあるだろう。

 だが、ここで大事なことは労災の認定は会社が決めることではなく、あくまでも労働基準監督署に権限があるということだ。会社の思い込みや独自ルールで労災と認めない判断をした後、労働者が労基署に駆け込んで労災が認められれば、会社としては難しい立場に立たされることもある。労災の訴えがあったときは勝手な判断をせず、社労士や弁護士に相談するほうがベターだろう。

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