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2024年16号(2024/4/25)

<タックスニュース>税金・社保「滞納倒産」  前年から急増3.4倍

 東京商工リサーチがまとめた「全国企業倒産件数(負債1千万円以上)」で、税金や社会保険料の滞納を苦に倒産する企業が、1年で3.4倍に急増していることが明らかとなった。コロナ禍の資金繰り支援として認められていた納税猶予が終了し、無利子無担保のゼロゼロ融資の返済が本格化していることが企業にとって負担となっている様子がうかがえる。

「税金滞納(社会保険料を含む)」が要因とされるケースは、2023年度に82件発生。前年の24件から急増した。14年度以降では、18年度の83件に次ぎ2番目の多さで、コロナ禍以降では最多を記録した。

 資本金別にみると「1千万円以上5千万円未満」が31件で、2年連続で前年度を上回った。構成比は約4割を占めた。「1百万円以上5百万円未満」が24件、「5百万円以上1千万円未満」が14件で、いずれも前年を上回った。「1億円以上」「5千万円以上1億円未満」も各4件あり、滞納倒産が大企業から中小・零細企業まで幅広く発生している。東商リサーチは「税金滞納倒産がさらに増加することが危惧される」としている。

<タックスワンポイント>中退共は短期離職者だと元本割れ  3年半以上で掛金上回り

 中小企業を対象とした退職金準備制度「中小企業退職金共済制度(中退共)」は、短期間で離職する社員ほど受け取る金額が少なくなるので注意しなければならない。勤務期間が2年未満の社員が中退共から受け取れる退職金は掛金を下回ることになる。

 まず、掛金の納付期間が1年未満の人には退職金が支給されない。また1年以上2年未満の人も、退職金は支給されるが掛金相当額を下回る。2年から3年半の人でも、掛金と退職金の額は同額にとどまる。厚生労働省の調べでは、新規採用した社員の3割は3年以内に離職するというが、それに該当する人は"元本割れ"してしまうということになる。

 なお、中退共には費用の一部を国が助成する仕組みがある。新しく中退共に加入する事業主には、掛金月額の半額(従業員ごとの上限5千円)が加入後4カ月目から1年間、国から助成される。パートタイマーが掛金月額2千円~4千円で加入していれば、さらにそれぞれ300円~500円の助成金が上乗せされる。また加入済みの事業主も、掛金月額1万8千円以下の従業員の掛金を増額する際には、増額分の3分の1の金額を1年間受け取れる。

2024年15号(2024/4/18)

<タックスニュース>子育て支援金  高所得者年2万円の負担増

 少子化対策の財源確保のために公的医療保険料に上乗せする「子ども・子育て支援金」を巡り、年収1千万円を超える高所得者の負担額が年間約2万円に上ることが分かった。こども家庭庁が試算を示したもの。

 支援金制度は2026年度に始まり、徴収総額を1兆円とする28年度に制度が確立する予定。制度が整う28年度以降の徴収額は、年収200万円の人で月350円ほどだが、年収が高くなるにつれて負担は増し、年収1千万円の人だと月額1650円。年額に換算すると1万9800円となる。今年2月の時点で岸田首相は、1人当たりの負担額が月平均500円弱になると説明していた。

 今回の試算は、会社員らが加入する公的医療保険(協会けんぽ・健保組合・共済組合)の被保険者1人当たりの負担額を示したもの。関連法案の審議に当たり野党側が提出を求めていた。

 加藤鮎子こども政策相は記者会見で「正確に試算することは難しいものの、参考になるものとして21年度実績の総報酬で機械的に計算した」と説明。その上で「政府が総力を挙げて取り組む賃上げにより、今後、総報酬の伸びが進んだ場合には数字が下がっていく」と、希望的観測ともとれるコメントを付け加えた。

<タックスワンポイント>不動産取得税  贈与は課税、相続なら非課税

 不動産を取得すると、不動産取得税の納税通知書が都道府県から送られてくる。固定資産税などと異なり取得時1回限りの税金ではあるものの、その負担は決して軽くはない。

 取得税は土地や家屋を購入したときだけでなく、贈与によって得たときも同様に課税される。婚姻期間が20年以上の夫婦間の不動産の贈与は2000万円まで贈与税がかからないが、その場合でも不動産取得税を免れることはできない。さらに不動産取得税では、登記の有無も問われない。登録免許税は不動産を取得し、所有権の移転登記をしなければ課税されないが、不動産取得税はそうはいかない。

 取得税が課されない例外が、相続だ。相続であれば不動産取得税は課税されない。不動産取得税というのは、生きている人から不動産を取得した際に課税されるというのが原則だからだ。

 ややこしいのが、贈与税の課税方式の一つである「相続時精算課税制度」だ。同制度を利用して受け取った不動産には不動産取得税が課税される。なぜなら、同制度は「相続」と名称が付いているのでまぎらわしいものの、この制度は生きている人から相続が発生する前に「贈与してもらう」制度だからというのが理由となる。

2024年14号(2024/4/11)

<タックスニュース>複雑すぎる「定額減税」  自治体からは不安の声

 2024年度税制改正法案が3月28日、参議院本会議で可決、成立した。所得税と住民税から1人当たり計4万円を減税する定額減税の6月開始も決まった。ただ、減税と給付を組み合わせた複雑な事務作業に対する自治体の不安は残ったままだ。

 岸田文雄首相はこの日の記者会見で「官民が連携して、物価高を上回って可処分所得が増えるという状況を確実につくり、国民の実感を積み重ねていく」と強調した。

 連合の24年春闘の2次集計では、中小企業でも平均賃上げ率が4.5%に達した。定額減税は集中するボーナス期を意識して6月から始まり、手取り給与の上昇を実感させる狙いがある。政権が目指す「賃金が持続的に上がるという好循環」を実現するために着々と足固めを進める。

 一方で、減税と給付の実務を担う企業や自治体は、税務や給与計算システムの改修といった準備に追われ、事務作業の複雑さに困惑している。中でも自治体の担当者が頭を悩ませているのが「調整給付」の仕組みだ。

 定額減税は、所得税と住民税所得割を課税されている納税者とその扶養家族が対象となる。ただ、一部の低所得層は納税額よりも減税額が少なく、減税額が余ってしまう。この残額を現金給付するのが調整給付で、実施主体の各自治体は給付額を計算しなければならない。

 しかし、24年分の所得税から引き切れなかった減税額が分かるのは、25年の2~3月の確定申告が終わってからだ。給付はその後の住民税が確定する5~6月以降となり、野党から「足元の物価高対策としては遅すぎる」と批判された。

 この問題の解決策として政府が示したのが、デジタル庁による「推計所得税額等算定ツール」(仮称)の開発だ。自治体が持つ住民税などの情報をアップロードすれば、自動的に今年の所得税額が推計される。自治体は結果を元に給付の準備を進め、今夏にも調整給付を始められるという。

 ただ、ツールの完成は5月末。一部自治体の担当者からは「実際に使えるかは完成したツールを見てみないと分からない」と不安視する声も上がっている。

<タックスワンポイント>役員の自宅で得意先を接待  費用にできる?

 会社の得意先を飲食店で接待することは企業にとって日常だが、相手様ともっと深くお付き合いしたいときには、役員が自宅に招いてもてなすこともあるだろう。その際、振る舞った飲食にかかった費用は交際費として計上できるのか。

 まず、交際費とは、その会社の得意先や仕入先その他事業に関係ある者に対する「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」とされている。そして、その接待を行う場所については特に決められていない。したがって、役員や社員の自宅で接待した費用も理屈上は交際費に該当することになる。

 だが、交際費に該当するためには、その接待の明確な目的が問われることになる。目的が、会社の業務に関連して得意先と親睦を深めることであれば、その費用は会社の交際費に該当することになるが、役員と得意先が友人関係で個人的な付き合いでの招待であるというような場合には、その費用は役員個人が負担すべきものとなり、会社の費用とすることは認められない。もし個人的な費用を会社の費用としていると、その費用相当額は役員に対する給与として取り扱われることとなるので気を付けたい。

2024年13号(2024/4/4)

<タックスニュース>高まる政治不信  裏金議員は納税せよ

 自民党派閥の政治資金規正法違反事件を巡り、「裏金議員」たちの納税意識と一般納税者の常識との乖離がさらに顕著になってきた。政治不信が高まる中、政治資金収支報告書に未記載だった裏金に対して納税を求める声が広がっている。

 自民党の調査報告書では、2018~22年に派閥から還流されて不記載(一部は誤記載と主張)だった政治資金パーティー収入は計5億7949万円だった。還流を受けた議員らは、清和政策研究会(安倍派)79人、志帥会(二階派)6人の計85人に上った。不記載だった理由としては、秘書が事務所で現金保管し、必要に応じて会合費として支出していたからなどと説明している。

 立憲民主党の枝野幸男前代表は国会で「2年間報告がなかったお金を政治活動費と言われても、国民は納得できない」と追及。だが「裏金議員」の多くは、領収書や請求書が確認できたものに限り政治資金収支報告書を訂正して支出に計上したとし、会合には同僚議員やマスコミが出席していて非課税の「政治活動費」に該当すると主張している。

 政治団体は大学のサークルや自治会と同様に、主として非営利で活動する法人格のない団体に分類される。収益目的の事業を営んだ場合を除いて、法人税は原則非課税だ。

 しかし、政治家個人が資金を受領すると、「政治家個人の所得に当たる」とみなされるため、所得税法の課税対象となる。還流資金が、政治団体と議員個人のどちらに帰属するかによって課税の可否が決まることになる。還流資金が課税対象になる可能性はあり、「秘書が収支報告書に記載せずに資金を事務所の金庫で保管していた場合、還流資金は政治家個人の『雑所得』とみるのが自然だ」と税務調査の必要性を指摘する専門家もいる。

 また、与党内からも納税の必要性に言及する声が聞かれ、河野太郎デジタル相は、領収書がないものについて「仮に所得であったなら、加算税を付けて国に返納するなり、党を経由して国に返納するなりすることは一案だ」と述べている。

 国税当局が「裏金議員」の税務調査に乗り出すのかは不明だが、関係議員の処分の決定後、納税を巡る議論はピークを迎えそうだ。

<タックスワンポイント>生命保険の払済と転換の違いはドコ?  転換には経理の「洗い替え」が必要

 資金繰りが苦しくなれば、これまで節税効果を目当てに加入していた生命保険の保険料支払いが負担となることがあるかもしれない。そうしたときには解約するのも一手だが、これまで積み立ててきた分を無駄にしたくないのであれば「払済」や「転換」も選択肢に入れたいところだ。

 保険期間の途中で保険料の支払いを中断し、それまでに積み立てた保険料の範囲内で、保険金額を減額した新たな契約に変更する手法を「払済保険」と呼ぶ。保険料の支払いができないと通常は契約解除または失効になるが、払済保険に変更することで、解約返戻金を利用して保障を継続させることができるわけだ。

 一方、契約している生命保険をいったん解約し、その解約返戻金などを新たな生命保険の保険料に充当して別の保険契約に切り替える手法を「転換」と呼ぶ。現在の保障内容が過剰だと感じているなら、転換を利用すれば、保険料負担を一定範囲に抑えつつ新たな契約を締結できるわけだ。保険会社によるものの、転換後の契約が無効となってしまったケースや転換後契約で保険金等が支払われない場合などには、転換前の条件で保険金を支払ったり転換前契約を復旧させたりできることもある。払済保険と転換は、解約返戻金などを一時払保険料として充当する点では一致しているものの、後者が保険期間の変更が可能なのに対して、前者は保険期間の変更がない点が異なる。また払済保険では、保障金額が元の保障額よりも小さくなるほか、付帯していた各種特約も消滅することになる。

 転換にもデメリットはある。例えば保険料は転換申込時の年齢で計算されるため、既契約の保険に加入した当初より割高になることが多い。また形としては新たな保険を契約することになり、転換後契約の保障額に対する告知や検診が必要なので、検診の結果などによっては加入できない可能性もゼロではない。そして何より、転換後契約の予定利率が適用されるため、低金利の状況では当初の運用利率が保障されない点が大きい。

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