国税庁は5月30日、2024年分の「所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」を発表した。所得税の申告人員は前年比0.6%増の2339万人で、このうち申告納税額があったのは同22.6%減の517万人。その所得金額は同3.2%増の51兆1604億円で、申告納税額は同8.6%増の4兆3989億円だった。所得税の申告人員は15年分以降ほぼ横ばいで推移。申告人員のうち、申告納税額があるひと(納税人員)の数は減少した一方で、所得金額・申告納税額は増加している。
事業所得者のうち納税人員は同29.1%減の118万人で、その所得金額は同7.2%減の7兆4622億円、申告納税額は同3.5%減の7474億円となっており、前年分と比較するといずれも減少した。
事業所得者以外の納税人員は同20.5%減の399万人で、その所得金額は同5.3%増の43兆6982億円、申告納税額は同11.5%増の3兆6515億円となっており、前年分と比較すると人員は減少し、所得金額・申告納税額は増加した。
土地等の譲渡所得の申告人員は同4.3%増の58万人で、このうち所得金額があったのは同3.4%増の39万人。その所得金額は同6.8%増の6兆4993億円だった。
株式等の譲渡所得の申告人員は同2.3%増の118万人で、このうち所得金額があったのは同13.4%増の74万人。その所得金額は同42.7%増の8兆854億円だった。
e-Taxの利用による所得税等の申告人員は同7.9%増の1732万人で、前年分と比較して127万人増加。すべての申告人員のうち74.0%が利用している計算で、ほぼ4人に3人がe-Taxで申告しているといえる。
申告人員全体のうち、4割弱が自宅からe-Taxで申告しており、そのうちの約半数がスマホを利用している。その一方で、確定申告会場での申告人員は全体の約1割にとどまり、年々減少する傾向にある。
個人事業者の消費税の申告件数は同7.5%増の212万件で、前年分と比較して15万件増加した。申告納税額は同16.8%増の8004億円だった。
贈与税の申告人員は同7.0%減の47万人で、このうち申告納税額があったのは同11.4%減の33万人、その申告納税額は同10.9%増の3935億円となっており、前年分と比較すると申告人員・納税人員は減少し、申告納税額は増加した。
贈与税の申告状況を課税方法別にみると、暦年課税を適用した申告人員は同14.0%減の40万人で、その申告納税額は同9.7%増の3274億円。相続時精算課税を適用した申告人員は同59.2 %増の8万人で、その申告納税額は同17.5%増の661億円となっている。
土地を購入した人が納める税金は、取得時に納める「不動産取得税」と、売買契約書に貼る「印紙税」、登記に必要な「登録免許税」の3つ。ただし、時価と比べて低い価格での取引なら、加えて贈与税が課される。これが親子間の場合、通常の贈与と比べて税率が軽減されることを覚えておきたい。
親子間の贈与は、兄弟間や夫婦間の贈与に比べて税率が低く設定されている。ここでいう親子間贈与とは、祖父母や父母などの「直系尊属」から18歳以上(1月1日時点)の子どもや孫への贈与を指す。
基礎控除後の課税価格が1千万円なら、通常は税率40%だが、親子間なら“家族割”で30%となる。仮に、購入額(基礎控除後)が時価に対して1千万円低ければ、通常の贈与税と比べて、親子間なら約60万円下回ることになる。
なお時価(適正価格)を把握するには、土地の相続税評価額を調べるほか、不動産鑑定士や不動産仲介業者などの専門家に金額の査定を依頼する方法がある。
一方、売り手が納める税金は、実際の売却金額から財産取得費や譲渡費用を差し引いた所得に掛かる譲渡所得税となる。取得価格より低い金額での売却なら税金はかからない。
自民党の税制調査会は5月23日、党本部で消費税をテーマとする全体会合を開いた。例年、与党税制改正大綱をとりまとめるために、年末に集中する自民税調の会合がこの時期に開かれるのは極めて異例のこと。参院選を目前に控え、党内で根強い「消費税減税」を求める意見を抑え込む狙いがある。
今回の会合は、参院選を前にした「消費税勉強会」ともいえるもの。会合には約50人が出席。党執行部、党税調とも消費税減税には否定的で、仮に減税した場合の地方財政や経済活動への影響などを説明し、理解を求めた。
会合では後藤茂之税調小委員長が「消費税は社会保障制度を支える重要な財源であるほか、税率を引き下げれば多くの関係者にとって大変な実務上の負担になる」と強調。これに対し消費税減税を求める参加者からは「実質賃金が上がらないなかで、物価対策として国民の理解を得やすい」「食料品の消費税率を0%にするべきだ」などとする意見が出た。その一方で、「地方財源として重要」として消費税の減税に慎重な意見もあった。
会合後、減税派の高市早苗議員は「多くのひとが物価高で困っている。食料品の税率を下げることは国の品格だ」と語った。だが、後藤税調小委員長は「税調で消費税減税について議論する予定はいまのところない」と断言している。
所得税や法人税にはない相続税独自のルールの一つに「連帯納付義務」というものがある。複数いる相続人のうち誰かが相続税を払えない時に、他の相続人が肩代わりしてでも納めなければいけないという制度で、性格としては借金の連帯保証人に近い制度だ。国税当局からすれば誰が払うかは関係なく、遺産全体から生じた税負担分がすべて徴収されない限り納税義務が果たされたとはみなさないということらしい。
もちろん当局もできる限り本人から徴収しようとはするが、さまざまな理由で納める能力がない、あるいは失踪したなどの理由で現実的に徴収が難しいとなれば、容赦なく連帯納付義務者であるほかの相続人のところに徴収にやってくる。そこで「自分は関係ない」と言い張ってもむだで、最悪の場合は連帯納付義務者の財産が差し押さえされることもあり得る。連帯納付義務を免れるには、相続放棄をするしかない。
こうした現実を踏まえ、遺産分割協議をする際には、それぞれが負うことになる相続税額と、その納税資金にまで思いを巡らせたほうがよい。たとえほかの相続人と仲が悪くて顔も見たくない相手だったとしても、まわりまわって自分に迷惑が降りかかることを考えれば知らんぷりはできないだろう。
なお連帯納付義務によって他の人の税金を肩代わりした場合、本来の納税義務者に対して立て替えた分を請求する「求償権」という法律上の権利が生じる。この権利を使うか使わないかは自由だが、相手に立替分を払える資力があるにもかかわらず求償権を行使しないと、今度は立て替えた分の贈与があったとみなされて新たな納税義務が生じるので注意が必要だ。例えば遺産分割協議が長引いてしまい、手元にまだ相続財産がないタイミングで納税を一時的に肩代わりしたが、その後、協議がまとまって遺産が行き渡ったというケースなどが考えられるだろう。