公益法人協会はこのほど開いた理事会で2026年度の「税制改正に関する要望」を取りまとめ内閣府に提出した。公益信託制度の抜本的な見直しに伴う税制の整備などを求めている。
協会は要望書で、公益法人の役割と活動について「高齢者支援、子育て支援、青少年の健全育成・教育増進、文化芸術、国内外の災害支援、奨学金や学術研究助成など、コミュニティや専門分野の最前線で多くの方々が献身的に活躍しています。日本においては、これら公益法人をはじめとする非営利の組織は慢性的な資金難やさまざまな過剰な規制があるなか、創意工夫を凝らして安心、安全で安定した社会を作るために懸命に活動を続けています」と説明。そのうえで、「『課題先進国』といわれる日本において、さまざまな社会的課題に取り組む非営利組織の果たす役割は極めて重要」であると指摘し、「これらの団体に対する資金的支援(寄附)によるさらなる公益活動の促進が強く望まれています。公益法人の運営基盤強化、殊に資金・財務面の強化は喫緊の課題であり、それを税制面で支え寄附文化を定着させることが必須」だと主張している。
項目別の要望では、「寄附文化を醸成し、寄附を通じて社会参加を促進するために」として(1)特定公益増進法人等への法人寄附に係る特別損金算入限度額の拡充 (2)寄附に係る所得・税額控除制度の活用手続きの簡便化 (3)税額控除制度に係るPST(パブリック・サポート・テスト)要件の撤廃 (4)大規模災害等、天災発生時における指定寄附金の制度化 (5)公益法人等への資産寄附に係るみなし譲渡所得の特別控除の特例の創設 (6)寄附金控除における税額控除率の引き上げ (7)寄附金控除の適用下限額の撤廃――を求めたほか、「公益法人の活動基盤を強化し、公益活動を促進するために」として(1)特定収入に該当しない寄附金の扱いの見直し (2)公益法人が拠出する褒賞金受領者に対する非課税措置について (3)公益目的事業実施のための土地、建物等に対する固定資産税の非課税措置――の3点を要望している。
また、「公益信託制度など特に26年度に要望する事項」として(1)公益信託制度の抜本的見直しに伴う税制の見直し (2)消費税インボイス制度における経過措置の延長――を求め、要望書の結語では「非営利の活動を支え、かつ促進する公益税制とするために、今回の制度改正の基本である『民による公益の増進』の一層の拡充を求め、その実現を切に願うものです」としている。
資産を譲り渡したものの、代金を払ってもらえなかったら、場合によっては取り立てを外注することもある。外注先としてすぐに思い浮かぶのは弁護士だろう。そして譲渡代金が回収できれば、当然この弁護士に報酬を支払うわけだが、その金は譲渡費用として、譲渡所得から控除したいところだ。しかし、譲渡代金の取り立てのための支払いは、譲渡費用とすることはできない。
譲渡収入金額から控除できる費用は、仲介料、登記費用などのように資産を譲渡するために直接要した費用や、借家人を立ち退かせるために支出した立退料などの、資産の譲渡価額を増加させるために譲渡の際に支出した費用とされている。
そのため、譲渡した後に譲渡代金の取り立てのために支出した弁護士費用は、譲渡に直接要した費用ではなく、また譲渡価額を増加させるための費用でもないため、譲渡費用にはならない。
生命保険業界で働く労働者で組織する産別単産、全国生命保険労働組合連合会(生保労連)はこのほど、2026年度の「税制改正に関する要望〈国民・勤労者の生活保障の充実に向けて〉」を取りまとめ公表した。
重点要望としては「生命保険料控除制度の拡充」「企業年金制度等の積立金に係る特別法人税の撤廃」の2項目を掲げている。
要望項目としては、(1)介護医療保険料控除および個人年金保険料控除の拡充 (2)死亡保険金の相続税非課税限度額の引き上げ (3)非課税財形の加入年齢の拡大と非課税限度額の引き上げ (4)企業型確定拠出年金制度の退職時脱退一時金支給要件の緩和 (5)確定給付企業年金に関する現行制度の存置――の5点を掲げ、死亡保険金の相続税非課税限度額については現行の限度額に「配偶者分500万円+未成年の被扶養法定相続人数×500万円」を加算するよう求めている。
相続が開始すると、相続人は、(1)単純承認(プラス財産だけでなく借入金などのマイナス財産を含む一切の財産を無制限・無条件で承継することを承認する方法) (2)限定承認(相続人がプラス財産で利益を受ける範囲に限って、マイナス財産を相続する承認方法) (3)放棄(被相続人の財産のすべてを放棄し、一切の財産を相続しない方法)――の3つのうちのどれかを選ばなければならない。
このうち限定承認は、プラスの財産の額に限定してマイナスの財産を引き継ぐ形態であるため、借金をしてまで相続しなくてもよい。資産の全体がマイナスであっても、プラスの相続財産以上の負債を背負うことはない。プラス財産の範囲でマイナス財産を裁判所で清算してもらうが、債務を任意で弁済できなければ相続財産は換価処分されることになる。
限定承認のデメリットとしては、限定承認を行うには相続人全員で取り組む必要があり、一人でも反対があれば裁判所は認めてくれない点がある。さらに、限定承認では小規模宅地の特例が使えず、また被相続人から資産が譲渡されたものとして譲渡所得税が発生することも覚えておきたい。一般的に「マイナスはあるけど絶対に手放したくない資産がある」場合か、「プラスもマイナスも、いくらあるのは分からない」場合に、限定承認を選ぶことが多いようだ。
国税庁はこのほど、2024年度の相続税の「物納」「延納」申請・処理状況を公表した。申請件数は「物納」が50件、「延納」が1197件。20年前(05年度)の申請件数は物納が1733件、延納が5763件なので、当時と比べると物納はわずか2.88%、延納は20.77%に過ぎず、ともに大幅減となっている。
「物納」の申請件数は50件、前年度に未処理で繰り越されていた件数は15件で、合計65件。このうち物納が許可された件数は31件、取下げ件数は2件、却下件数は3件で、処理件数の合計は36件だった。全体の47.69%が許可され、55.38%が処理されている。申請金額は89億円、未処理繰越金額は7億円で、合計96億円。このうち物納が許可された金額は45億円だった。
「延納」の申請件数は1197件、未処理繰越件数は273件で、合計1470件。このうち延納が許可された件数は832件、取下げ件数は251件、却下件数は16件で、処理件数の合計は1099件だった。全体の56.59%が許可され、74.76%が処理されている。申請金額は573億円、未処理繰越金額は140億円で、合計713億円。このうち延納が許可された金額は347億円だった。
20年前(05年度)からの処理状況をみると、「物納」「延納」とも申請件数・金額が大幅に減少している。05年度に物納が許可された件数は2730件、金額は1464億円で、延納のそれは5626件、1479億円だった。当時の物納許可件数は24年度の約88倍、金額は約33倍。延納許可件数は約7倍、金額は約4倍だった。
損害保険契約に基づく一時金や満期返戻金は、税法では基本的に「一時所得」扱いとなる。しかし生命保険の一時金については、「業務に関して受けるもの」に限り、一時所得から除かれる点に注意したい。例えば個人事業者が使用人の退職金原資確保のために、自分を契約者かつ保険金受取人、使用人を被保険者として生命保険契約を結んだとする。この契約に基づいて支払われる満期保険金は、一時所得ではなく「事業所得」扱いとなる。
だがこれはあくまで生命保険のみの扱いだ。ここを勘違いして、損害保険契約に基づく満期返戻金についても、事業に関連する保険契約であれば「事業所得に該当するのではないか」と捉えるミスが少なくない。損害保険契約の満期返戻金については、たとえそれが事業に関連するものであっても「一時所得」として取り扱われる。
気になるのが、支払保険料に関する税務処理との整合性だ。仮に店舗を対象とした損害保険で、支払保険料について事業所得の計算上、積立保険料として資産計上している部分と必要経費として処理している部分があるときはどうするのか。こういう場合、一時所得の計算に当たっては、すでに事業所得の計算上必要経費に算入した部分については再度経費として控除できないため、積立保険料部分のみを控除することになる。
日本損害保険協会(舩曵真一郎会長=三井住友海上火災保険社長)はこのほど開いた理事会で2026年度の「税制改正関する要望」を決定し7月24日に発表した。「火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実」など7項目について要望している。
要望は、(1)火災保険等に係る異常危険準備金制度について、洗替保証率を現行の30%から40%に引き上げること(本則積立率となる残高率も同様に引き上げ)(2)国際課税ルールに基づく国内法制度の見直しや実施にあたっては損害保険ビジネスの特性を踏まえ、正当な経済活動を阻害することがないよう十分に留意すること(3)税率の引上げに伴って拡大する、損害保険に係る消費税制上の課題(「税の累積」「税の中立性の阻害」)を解消する抜本的な対策を検討すること(4)確定拠出年金制度について、個人型年金および企業型年金の積立金を対象とした特別法人税を撤廃すること(5)地震保険のさらなる普及のため保険料控除制度の充実策について検討すること(6)受取配当等益金不算入制度について、「二重課税の排除」の観点から議論を行うこと(7)既に収入金額を課税標準(100%外形標準課税)としている損害保険業に係る法人事業税について、現行課税方式を継続すること――の7項目。
このうち損保協会が消費税制上の課題とする「税の累積」「税の中立性の阻害」とは、損害保険料が消費税の非課税対象となっていることで生じる問題のこと。
「税の累積」は、一般事業者にとって原価の一部である損害保険料(自動車保険や火災保険、物流リスクや賠償責任に備える保険など)のなかに「見えない消費税」が含まれるため、本来は担税者ではないのに仕入税額控除ができず、実質的には一般事業者が負担するかたちとなっている問題。これにより、流通過程を経るたびに「転嫁」と「仕入税額控除」の連鎖の寸断による「税の累積」という課題が発生している。
「税の中立性の阻害」は、損害保険会社が別会社に事務処理などをアウトソーシングした場合、業務の委託費などには消費税が課されるが、仕入税額控除はほとんど行えないために生じる問題。損害保険会社では、消費税の負担を軽減する観点から、業務の内製化を志向するようになるため、税制のあり方によって企業活動が左右される「税の中立性」の課題(セルフ・サプライ・バイアス)が発生する。損保協会では、この課題を解決する制度上の手法として、「付加価値税(消費税)制度を導入する多くの国では、グループ内取引について付加価値税制度上取引自体がないものとして取り扱い、グループ全体としての課税売上割合などにより一括して納税するグループ納税制度を導入」していると指摘。そのうえで「我が国においても同様な制度の導入が必要であると考えます」と提言している。
昨年は事業が好調だったが今年に入って業績が急落し、上半期の時点で多額の赤字が出るほどだったとする。こうした場合に気を付けたいのが、法人税の中間申告だ。事業年度の開始から約半年後に、前年の納税額に基づき中間申告をするのだが、その際に前年度の法人税額の2分の1に当たる法人税を納めることを求められてしまうためだ。昨年に儲けた分を内部留保として手元に置いていればいいが、赤字の状況で支出がかさんで納税資金が足りないというケースもあるだろう。
このように中間申告の納税資金が手元にない場合は、書類の通りに前年度の法人税額の半額を申告額とせず、今期の決算をその時点で仮に行い、それに基づいた税額を納めることも可能だ。その結果、仮決算が赤字なら納税額はゼロとなるので覚えておきたい。
ただ仮決算による中間申告をすれば資金繰りは円滑になるが、手間は増えることになる。仮と言っても確定申告と同じように決算をして、確定申告書を作成しなければならないからだ。手間や余裕資金を踏まえて自社に有利な方法を選ぶようにしたい。