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2025年48号(2025/12/25)

<タックスニュース>所得税調査の申告漏れ所得  「キャバクラ」がワースト

 国税庁が12月中旬に発表した2024事務年度(24年7月~25年6月)の「所得税及び消費税調査等の状況」によると、事業所得を有する個人1件当たりの申告漏れ所得が高額な業種は「キャバクラ」で、金額が4164万円、その追徴額(加算税込み)が1474万円だった。

 キャバクラはもともと20年度までは申告漏れ所得が高い業種の"常連"だった(業態に合わせて管理を細分化する前の括りは「キャバレー」)。だが、21~23年度は上位から外れていた。今回は17年度以来のワーストとなり、国税当局は「コロナ禍を経て売り上げが回復してきた影響が要因の一つに考えられる」としている。

 次いで高額だったのは「眼科医」で、申告漏れ所得は3894万円、その追徴額は964万円となり、初めて上位10業種に入った。要因について、国税当局は「明確なものはなく、これまで積み上げた成果」としている。次いで「ホステス、ホスト」、前年度まで3年連続でワーストだった「経営コンサルタント」、そして「太陽光発電」などの申告漏れ所得が高かった。

<タックスワンポイント>改良を伴う修理を損金にするコツ  要件は20万円未満、周期3年以内など

 固定資産の修理・改良のため支出した金額には、資本的支出と修繕費がある。資本的支出は、修理したことにより使用期間が延長し資産価値が高まるもの。税金計算上では、減価償却によって複数年にわたって費用に計上する。一方、修繕費は、維持管理や原状回復を目的とするものだ。税金計算上では、出費した1年目に全額計上できるので、修繕費として一括処理し損金算入した方が節税効果が大きくなる。

 修繕費となる要件は、20万円未満かどうか、周期がおおむね3年以内か、通常の維持管理のためのものか、修理した資産の前期末の取得価格の10%以下か、などだ。

 具体事例では、車両のタイヤ交換費用、パソコンの修繕費用など。資金繰りの関係で当期に納税が困難なとき、修繕費を使って多額の損金を算入するときがある。その際、修繕費とした判断根拠を残しておくことで、税務調査などで否認されるリスクを軽減したい。

2025年47号(2025/12/18)

<タックスニュース>「金の密輸」への対応を強化  臨時税関長会議 片山財務相が訓示

 財務省はこのほど、悪質化する金密輸事件の増加に対応するため「臨時税関長会議」を開催。出席した片山さつき財務相が「足元の金の輸出入量や国内の新規の生産量の推移は、密輸の増加を強く示唆するもの。組織的な密輸スキームが用いられ、密輸の利益が犯罪組織の資金源になっている可能性も否定できない。水際の取締りを担う税関の信頼に関わる深刻かつ切迫した事態であり、関税局・税関一体で金の一連の流れに着目した総合的な対策を講じる必要がある」と訓示した。

 片山財務相は、(1)さまざまな情報や高性能な取締・検査機器を駆使して輸入時の取締徹底 (2)不正輸出防止のための金の現物確認の実施、流通経路の不明な金の輸出時の取扱の検討など輸出時の取締強化――の2点を全国各地の税関長に指示したうえで、制度面の対応として「現行法制下で初めて無許可輸入に対する税関長の通告処分として金の没収を導入する」「通告処分の罰金相当額の算定基準を犯則時価格から大幅に引き上げ、時価相当に変更する」と表明した。

 また、密輸の全容解明に向けた関係機関との連携強化を図る観点から、(1)輸出入申告を起点として金の流通実態にも踏み込んだ情報収集・分析 (2)国内関係機関との連携の強化を通じた国内流通対策・収益の国外流出対策等の推進、海外当局やWCO等の国際機関と連携した対応――などにもスピード感を持って取り組むよう指示した。

<タックスワンポイント>お年玉に贈与税がかかる可能性は?  社会通念上、高すぎると…

 現金などの財産を誰かに分け与えると、「贈与」があったとみなされて贈与税の課税対象になる。年初の恒例行事であるお年玉を渡すという行為も、もちろん贈与の一種だ。

 しかし、「財産の性質や贈与の目的」によっては贈与税が課されないこともあり、そのひとつに「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品」がある。お年玉は「年末年始の贈答」に該当するので課税対象外だ。お年玉とそれ以外の贈与の金額を合計して贈与税の年間非課税枠110万円を超えるとしても、お年玉以外の贈与が110万円以下なら贈与税はゼロとなる。

 ただ、贈与税を免れるお年玉は「社会通念上相当と認められるもの」でなければならない。具体的な金額基準はないが、何千万円ものお金を渡すのなら、ポチ袋(お年玉袋)に詰め込んで「これは非課税になるはずのお年玉なので……」といいつくろったとしても、税務署には通用しないだろう。

2025年46号(2025/12/11)

<タックスニュース>総務省が点検結果公表  各省庁の「租特の政策評価」

 総務省行政評価局は11月25日、「租税特別措置等に係る政策評価の点検結果」を公表した。租税特別措置は税負担公平原則の例外であり、その適用実態や効果が透明で分かりやすいものでなくてはならないことから、各行政機関は措置の必要性や有効性について国民への説明責任を果たしていくため、法令に基づいた政策評価を実施することが義務付けられている。

 総務省では毎年度、各行政機関が税制改正要望に際して行う「租税特別措置等に係る政策評価」(政策評価書)で、十分な分析・説明がなされているか点検している。今回公表したのは2026年度税制改正要望に際しての「政策評価」のうち、点検対象とした40件の結果について。内訳は経済産業省が11件、国土交通省が10件、内閣府が7件、金融庁・厚生労働省・農林水産省が各3件、総務省・文部科学省・防衛省が各1件。

 このうち、経産省の「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制(生産工程効率化等設備を取得した場合の特別償却又は税額控除)の延長等」の評価書については、「達成目標が適切に設定されておらず、効果の説明も不十分」であると指摘。内閣府の「国家戦略(総合)特区における特別償却又は税額控除の延長」の評価書については、「要望期間の期限末の目標が設定されておらず、効果の説明も不十分」としたうえで、「将来の達成目標の実現見込みや適用数が予測されていないため、本特例措置が達成目標の実現にどの程度寄与するのか明らかでない」と指摘している。

<タックスワンポイント>年末調整のミス やり直しは1月末までに  対象扶養親族の減少、給与の追加…

 年末調整は12月31日時点での情報を基に、その1年の所得税額などを確定させるために行うものだ。そのため、たとえ年末調整の作業が12月上旬に終わっていても、年内に従業員に家族環境の変化などがあれば、それを反映させる修正作業が求められる。

 例えば従業員の一人から、扶養に入れていた子のアルバイト収入が思っていたより多かったため扶養から外れることになり、年末調整をやり直してほしいといわれたとする。このように年末調整が終わった後にその内容に変更が生じたときは、給与所得の源泉徴収票を受給者に交付することとなる翌年1月末日までに年末調整をやり直さなければならない。

 年末調整の内容が変更になる要素としては、(1)本年分の給与を追加して支払うこととなった (2)子どもが結婚して控除対象扶養親族の数が減少した (3)受給者本人が障害者に該当することとなった (4)配偶者控除または配偶者特別控除の適用を受けた配偶者や受給者本人の合計所得金額の見積額と確定した合計所得金額に差額が生じたことで控除額が変わった――などが考えられるだろう。

 1月末までに間に合わず、源泉徴収票の発行後や2月1日以降に再調整が必要となった場合には、2月16日から3月15日の間に従業員自身が確定申告することになる。

2025年45号(2025/12/4)

<タックスニュース>暫定税率廃止に伴う代替財源が論点に  与党税調 税制改正に向け議論本格化

 自民党と日本維新の会の税制調査会は11月下旬の2日間、それぞれ総会を開き、2026年度税制改正に向けた議論を本格化させた。小野寺五典自民党税調会長は「高市政権になってから初の税制改正。投資の促進、賃上げ、物価への対応など重要な課題について税制面からしっかりと後押しすることが求められる」と意気込んだ。

 高市早苗政権の発足後、自民税調のかたちは大きく変化した。旧大蔵省出身で財政規律を重んじることから「ラスボス」と呼ばれてきた宮沢洋一氏が税調会長から退任。消費税の減税に慎重な森山裕前幹事長も幹部会合である「インナー」のメンバーから外れた。代わりにインナーの経験がない小野寺氏が税調会長となり、「スタイルそのものをガラッと変えてほしい」とする高市首相の要望に沿った体制になった。

 大きなテーマとなるのが、所得税の課税最低限である「年収の壁」を引き上げる制度設計についてだ。自民と国民民主党とでは、引き上げ方法について異なった考えがある。少数与党としては、国民民主など野党からの協力を取り付けなければならないため、与党税調が落としどころを見つけていく必要がある。

 また、ガソリン・軽油の暫定税率廃止に伴う代替財源も大きな論点になりそうだ。自民や立憲民主党などの与野党6党は法人税関係の租税特別措置の見直しや、極めて高い所得者の負担の見直しなどについて25年末に「結論を得る」としている。ただ、廃止で失われる年1.5兆円分の代替財源のうち、どれだけの割合について方針を決められるかは不透明だ。

 一方で、高市首相は投資促進に関する新たな税制に前向きな姿勢を見せている。現在は政権への支持率の高さから「政高党低」といえる状況だが、自民税調が政権とどのような距離感を測っていくのかも注目される。

<タックスワンポイント>税制改正 スケジュールが乱れる例外とは  東日本大震災では"つなぎ改正"

 毎年夏ごろに各省庁は税制改正要望をまとめ、これを基にして与党が12月、翌年度の税制改正法の原案「税制改正大綱」を公表する。政府は大綱に基づき年明けの国会に改正法案を提出し、国会を通過した法律が4月1日に施行される。これが税制改正の通常のスケジュールだ。

 想定されていなかったようなトラブルが起きればこのスケジュールが狂うこともある。例えば2011年には、国会で改正法が審議中だった3月11日に東日本大震災が発生し、審議は完全にストップすることとなった。その後、3月末にいったん"つなぎ"の改正法を成立させた後、被災地の状況などを見ながら改正議論を再開。結局、6月と11月の2度に分けて正式に関連法を成立させた後も、震災の復興財源などに関わる税の特別法が11月と12月にも成立するという異例の進行となった。

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