政府税制調査会は6月11日、「経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合」を開いた。この専門家会合は、税務手続や適正・公平な課税・徴収のあり方、経済社会のデジタル化を踏まえた税務・税制のあり方について、税制調査会の総会で議論するための素材を整理していくもの。
今回の会合では、(1)国境を越えたEC取引に係る適正な課税に向けた課題(2)税に対する公平感を大きく損なうような行為への対応(3)事業者のデジタル化・税務手続のデジタル化に向けた取組(4)個人住民税の現年課税化――について意見交換し、総会での本格的な議論を見据えた論点整理が行われた。
当日、財務省からは「国境を越えたEC取引に係る適正な課税に向けた課題」「税に対する公平感を大きく損なうような行為への対応」など、課題ごとの現状について説明がなされた。また、国税庁が委員に配布した説明資料「事業者のデジタル化・税務手続のデジタル化」では、「国税庁が目指す方向性~取引から会計・税務までのデジタル化(デジタルシームレス)の普及~」として、事業者による日常的な事務処理について、(1)請求や決済のやり取りがデジタルデータで行われ(2)当該データが変更等されず保存されるとともに(3)仕訳もデータ連携により記録され(4)そのデータが税務申告・納税まで連携されるようなケース―では「入力作業の負担軽減や税務コンプライアンスの向上を図ることが期待される」としている。
総務省からは「個人住民税の現年課税化」についての資料が配布され、「現年課税化の意義」として、(1)所得発生時点と納税の時点を近づけることで、前年より所得が減少した者の負担感が減少する。ただし、退職所得、利子、一定の上場株式等の配当や源泉徴収口座内譲渡所得等については、個人住民税においても現年課税が行われている(2)所得税と同時期に課税が行われる結果、税を負担する者にとって分かりやすいものとなる(3)収入発生時に税を徴収するため、徴税が容易になり、税収の安定的な確保に資する――点などを挙げて説明がなされた。個人住民税の現年課税化については、給与支払者(特別徴収義務者)の立場から日本商工会議所が「特別徴収制度の下で、現年課税化を導入しようとすれば、企業は、従業員の自社以外の給与等の所得や寄附金額等を把握したうえで、従業員の1月1日現在の住所の把握、従業員の住所がある地方自治体ごとに異なる税額計算等に係る事務を行う必要がある。企業の納税事務負担の増加を招く個人住民税の現年課税化には反対である」としている。また、全国町村会も課税団体としての立場から「個人住民税の現年課税化については、町村や事業主の事務負担が増加することなどから、慎重に検討すること」と要望している。
重度の障害がある人には自治体などから各種の助成などがあるものの、その生活はほとんど親族が生活を支えているというのが実態だ。そのため、生計を支えるひとは「自分の死後はどうしたら……」という不安を抱いているケースが多い。財産を残したとしても、多くを税金で持っていかれては、障害のある人の生活は成り立たないのではないかと思うのは当然だ。
そんな不安を軽減する方法として、「特定贈与信託」という制度がある。これは、親族などの個人(委託者)が信託銀行(受託者)に自分の財産を預け、信託銀行から特別障害者(受益者)に定期的に金銭を交付するというもので、特別障害者は6千万円を限度に贈与税が非課税になる。
特別障害者は、(1)重度の知的障害者と認定された者、(2)精神障害者1級の者、(3)身体障害者1級または2級の者――などを指す。信託する財産として認められるのは、金銭、有価証券、金銭債権、あるいは一定の要件を満たす不動産。受託者である信託銀行は、特別障害者の実際の生活費や入院加療費などの必要に応じ、定期的に信託財産の一部を金銭により支払うことになり、贈与者の死後も安定した収入につながり得るという。
総務省自治税務局はこのほど、2025年5月期の特別法人事業譲与税の都道府県別譲与金額を公表した。24年度の地方財政計画では前年度比10.8%増の総額2兆2470億円を譲与する。年4回に分けて譲与されるもので5月期分は今年度の1回目となる。今回の譲与金額は2097億4096万3千円。
19年度の税制改正で、地域間の財政力格差の拡大と大都市に税収が集中する構造的な課題に対処するため、法人事業税(所得割・収入割)の一部を分離して特別法人事業税が創設された。特別法人事業税は国税だが、法人事業税と併せて都道府県に申告・納付する。都道府県は全額を国に払い込む。国は都道府県の人口であん分し、特別法人事業譲与税として全額を譲与するという“キックバック”のような仕組み。ただし、地方交付税の不交付団体については譲与が制限される。
相続発生時には、遺言の検認手続き、相続財産の名義変更や登記など、さまざまな費用がかかる。これらを「遺言執行費用」といい、民法ではこの遺言執行費用を「相続財産の負担とする」と定めている。
ただし、これはあくまで民法の話だ。相続税法では、被相続人が生前に抱えていた借金などは相続財産から差し引けるが、遺言執行費用は被相続人の債務ではないため、控除できない。
相続税法において債務として遺産から差し引けるものには、借金のほか、住宅ローンの残債(団信保険に加入していない場合)、経営していた賃貸物件の敷金、未払いの公共料金や医療費など幅広いものが含まれる。
また葬式に必要な費用は債務ではないが、相続税の計算上では遺産総額から差し引くことが認められている。一方で墓石や墓地、仏壇などは、直接葬儀には関係しないとして債務から控除することはできない。
被相続人に課され、死亡後に相続人が納付する所得税などの税金も、それが死亡時に確定していないものであっても、債務として差し引ける。ただし、相続人などの責任で発生した延滞税や加算税は、その限りではない。
国税庁は5月30日、2024年分の「所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」を発表した。所得税の申告人員は前年比0.6%増の2339万人で、このうち申告納税額があったのは同22.6%減の517万人。その所得金額は同3.2%増の51兆1604億円で、申告納税額は同8.6%増の4兆3989億円だった。所得税の申告人員は15年分以降ほぼ横ばいで推移。申告人員のうち、申告納税額があるひと(納税人員)の数は減少した一方で、所得金額・申告納税額は増加している。
事業所得者のうち納税人員は同29.1%減の118万人で、その所得金額は同7.2%減の7兆4622億円、申告納税額は同3.5%減の7474億円となっており、前年分と比較するといずれも減少した。
事業所得者以外の納税人員は同20.5%減の399万人で、その所得金額は同5.3%増の43兆6982億円、申告納税額は同11.5%増の3兆6515億円となっており、前年分と比較すると人員は減少し、所得金額・申告納税額は増加した。
土地等の譲渡所得の申告人員は同4.3%増の58万人で、このうち所得金額があったのは同3.4%増の39万人。その所得金額は同6.8%増の6兆4993億円だった。
株式等の譲渡所得の申告人員は同2.3%増の118万人で、このうち所得金額があったのは同13.4%増の74万人。その所得金額は同42.7%増の8兆854億円だった。
e-Taxの利用による所得税等の申告人員は同7.9%増の1732万人で、前年分と比較して127万人増加。すべての申告人員のうち74.0%が利用している計算で、ほぼ4人に3人がe-Taxで申告しているといえる。
申告人員全体のうち、4割弱が自宅からe-Taxで申告しており、そのうちの約半数がスマホを利用している。その一方で、確定申告会場での申告人員は全体の約1割にとどまり、年々減少する傾向にある。
個人事業者の消費税の申告件数は同7.5%増の212万件で、前年分と比較して15万件増加した。申告納税額は同16.8%増の8004億円だった。
贈与税の申告人員は同7.0%減の47万人で、このうち申告納税額があったのは同11.4%減の33万人、その申告納税額は同10.9%増の3935億円となっており、前年分と比較すると申告人員・納税人員は減少し、申告納税額は増加した。
贈与税の申告状況を課税方法別にみると、暦年課税を適用した申告人員は同14.0%減の40万人で、その申告納税額は同9.7%増の3274億円。相続時精算課税を適用した申告人員は同59.2 %増の8万人で、その申告納税額は同17.5%増の661億円となっている。
土地を購入した人が納める税金は、取得時に納める「不動産取得税」と、売買契約書に貼る「印紙税」、登記に必要な「登録免許税」の3つ。ただし、時価と比べて低い価格での取引なら、加えて贈与税が課される。これが親子間の場合、通常の贈与と比べて税率が軽減されることを覚えておきたい。
親子間の贈与は、兄弟間や夫婦間の贈与に比べて税率が低く設定されている。ここでいう親子間贈与とは、祖父母や父母などの「直系尊属」から18歳以上(1月1日時点)の子どもや孫への贈与を指す。
基礎控除後の課税価格が1千万円なら、通常は税率40%だが、親子間なら“家族割”で30%となる。仮に、購入額(基礎控除後)が時価に対して1千万円低ければ、通常の贈与税と比べて、親子間なら約60万円下回ることになる。
なお時価(適正価格)を把握するには、土地の相続税評価額を調べるほか、不動産鑑定士や不動産仲介業者などの専門家に金額の査定を依頼する方法がある。
一方、売り手が納める税金は、実際の売却金額から財産取得費や譲渡費用を差し引いた所得に掛かる譲渡所得税となる。取得価格より低い金額での売却なら税金はかからない。
自民党の税制調査会は5月23日、党本部で消費税をテーマとする全体会合を開いた。例年、与党税制改正大綱をとりまとめるために、年末に集中する自民税調の会合がこの時期に開かれるのは極めて異例のこと。参院選を目前に控え、党内で根強い「消費税減税」を求める意見を抑え込む狙いがある。
今回の会合は、参院選を前にした「消費税勉強会」ともいえるもの。会合には約50人が出席。党執行部、党税調とも消費税減税には否定的で、仮に減税した場合の地方財政や経済活動への影響などを説明し、理解を求めた。
会合では後藤茂之税調小委員長が「消費税は社会保障制度を支える重要な財源であるほか、税率を引き下げれば多くの関係者にとって大変な実務上の負担になる」と強調。これに対し消費税減税を求める参加者からは「実質賃金が上がらないなかで、物価対策として国民の理解を得やすい」「食料品の消費税率を0%にするべきだ」などとする意見が出た。その一方で、「地方財源として重要」として消費税の減税に慎重な意見もあった。
会合後、減税派の高市早苗議員は「多くのひとが物価高で困っている。食料品の税率を下げることは国の品格だ」と語った。だが、後藤税調小委員長は「税調で消費税減税について議論する予定はいまのところない」と断言している。
所得税や法人税にはない相続税独自のルールの一つに「連帯納付義務」というものがある。複数いる相続人のうち誰かが相続税を払えない時に、他の相続人が肩代わりしてでも納めなければいけないという制度で、性格としては借金の連帯保証人に近い制度だ。国税当局からすれば誰が払うかは関係なく、遺産全体から生じた税負担分がすべて徴収されない限り納税義務が果たされたとはみなさないということらしい。
もちろん当局もできる限り本人から徴収しようとはするが、さまざまな理由で納める能力がない、あるいは失踪したなどの理由で現実的に徴収が難しいとなれば、容赦なく連帯納付義務者であるほかの相続人のところに徴収にやってくる。そこで「自分は関係ない」と言い張ってもむだで、最悪の場合は連帯納付義務者の財産が差し押さえされることもあり得る。連帯納付義務を免れるには、相続放棄をするしかない。
こうした現実を踏まえ、遺産分割協議をする際には、それぞれが負うことになる相続税額と、その納税資金にまで思いを巡らせたほうがよい。たとえほかの相続人と仲が悪くて顔も見たくない相手だったとしても、まわりまわって自分に迷惑が降りかかることを考えれば知らんぷりはできないだろう。
なお連帯納付義務によって他の人の税金を肩代わりした場合、本来の納税義務者に対して立て替えた分を請求する「求償権」という法律上の権利が生じる。この権利を使うか使わないかは自由だが、相手に立替分を払える資力があるにもかかわらず求償権を行使しないと、今度は立て替えた分の贈与があったとみなされて新たな納税義務が生じるので注意が必要だ。例えば遺産分割協議が長引いてしまい、手元にまだ相続財産がないタイミングで納税を一時的に肩代わりしたが、その後、協議がまとまって遺産が行き渡ったというケースなどが考えられるだろう。
漁業協同組合JFしまねの岸宏会長による不適切な会計処理などによって、法人税の納付が遅れ延滞金が発生するなどの損害を被ったとして、組合員の漁業者32人らが会長に対し1億円あまりの損害賠償を求めていた裁判で、最高裁は5月14日までに会長側の上告を棄却した。広島高裁松江支部が約3千万円の支払いを命じた2審判決が確定した。
この裁判は、会長の職務怠慢や、業務上必要のない「視察」での不適切な旅費・飲食費などの支出により、漁協に損害が生じたとして組合員らが約1億円の損害賠償を求めて提訴したもの。
1審の松江地裁は2024年6月、「県外への視察で旅費規定を超えた宿泊費や法人税などの納付が遅れたことによる延滞金の発生などは会長の不適切な事業運営によるもの」とし、会長に4150万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
2審の広島高裁松江支部は同年12月、会長が大型スーパーを視察した際の「旅費、飲食費の支出に違法性はない」として、1審よりも減額した約3千万円の支払いを命じていた。
岸宏会長は1944年生まれ。島根県出身。関西大学経済学部卒。89年島根県漁連常務理事、93年御津漁協代表理事組合長などを経て、06年漁業協同組合JFしまね代表理事会長に就任。10年には全国漁業協同組合連合会(JF全漁連)理事、13年にはJF全漁連代表理事会長に就任し22年に退任するまで長くトップに君臨するなど、全国組織の上部団体でも要職を歴任した漁業界の重鎮として知られる。
退任後3年しか経過していないJF全漁連の会長時代にも不適切な会計処理がなかったかについては明らかになっていない。JF全漁連の本部は東京都中央区新川に置かれており、所轄の京橋税務署(中央区新富)、東京国税局(中央区築地)とは目と鼻の先だ。
借地や借家の賃借関係においては、かつては大家が圧倒的に優位だった。しかし1992年に施行された借地借家法では、借り手に強い権利を認め、大家の一方的な退去勧告に従わざるを得ないというような事態は起こらなくなっている。大家の側からすれば、転居してもらうには一般的に借り手との交渉が不可欠で、それなりの補償金が必要になることも多い。
現在の借地権は強い権限を有し、契約期日の到来に際しては契約の更新を地主に請求することができ、また契約を更新しない場合には建物の買い取りを地主に請求することもできる。この借家人の持つ権利は、相続後も引き継がれる。相続にあたって「契約したのは被相続人だから死去により契約は解除する」などと一方的に借主に通知してくるケースも現実にはあるが、こうした要求に法的に応じる必要はない。土地の賃借に関しても同様で、借り手は「相続で賃借権を取得しました」と通知するだけで手続きは終了し、権利の継承に関して大家の許可は一切必要ない。
なお相続税申告に当たっての借地権の評価は、その土地の更地での金額に借地権割合を掛けて計算する。借地権割合は、国税庁ホームページで公開されていて、土地に路線価が定められていれば「財産評価基準書」の路線価図に、定められていなければ評価倍率表に記載されている数字を利用する。
これらの借地権とは異なり、契約期間の満了をもって更新せずに借地権が消滅する「定期借地権等」もある。こちらの相続財産としての評価に当たっては、地権者の経済的利益、宅地の取引価額、相続発生時の定期借地権の残存年数に応じた複利年金現価率などを使って計算する必要があり、かなりややこしい。特徴としては、期間の定めのない借地権に比べてかなり低い評価額となる点が挙げられるだろう。
名古屋地裁で5月8日、オートレースの車券が的中した際の払戻金を申告せずに脱税したとして、所得税法違反の罪に問われている岐阜県の無職男性51歳の初公判が開かれ、被告は起訴事実を認めた。
被告は2023年5月、購入したオートレースの車券が的中し、約3億6500万円の払戻金を得たとされている。検察側は冒頭陳述で「被告は税理士に相談して申告が必要だと説明されたが、納税額が多額になることを惜しんで申告しなかった」と指摘。同年分の所得税約7700万円を免れたとしている。
名古屋国税局の調査により発覚したもので、同局が3月6日までに名古屋地検に告発していた。被告が購入した車券は「モトロトBIG」と呼ばれるもの。払戻金を一時所得として申告せずに約1億8200万円の所得を隠していた。脱税で得た金は不動産の購入資金や遊興費に充てていたものとみられている。
オートレースや競輪、競馬、ボートレースなど公営競技の払戻金は、一時所得として確定申告が必要になるケースがある。払戻金による一時所得の金額は(1)払戻金の年間受取額を計算(2)払戻金を得た投票券(的中券)への年間投票額を計算(3)「(1)-(2)-50万円」の金額を計算(4)「(3)÷2」の金額を計算――の順で計算して求める。不的中投票券、いわゆる“ハズレ券”を購入した金額は「年間投票額」に含まれないため“経費”として差し引くことはできず、“当たり券”の購入額だけが計算の対象となる。国税庁ではホームページで「公営競技の払戻金に係る所得の計算書」を公開して注意を呼びかけている。
結婚して20年以上の夫婦による住宅や住宅資金の贈与は、2千万円までを課税対象から除外できる。この特例は、オスとメスが常に一緒に過ごすという「おしどり」の名前を使って、“おしどり贈与”とも呼ばれる。
ただし制度を利用することで、かえって支出が増えることもある。住宅の贈与の際には、不動産取得税や登録免許税、専門家への報酬など、合計すると何十万円もの支払いが生じるからだ。例えば住宅の贈与を受けた人は名義変更の際に土地や住宅の固定資産税評価額の3%分の「不動産取得税」を支払わなければならない。さらに所有権の移転登記にかかる「登録免許税」でも、贈与で住宅を受け取れば不動産の価格の2%だが、相続なら0.4%に税率が下がる。
税金以外にも、贈与の際に税務申告や登記手続きの代理を税理士や司法書士に依頼し、その後に相続が発生した際にも再び専門家に依頼するとなると、贈与をせずに相続時だけに手続きの代理を依頼したひとと比べて支払う報酬総額が割高になりやすい。
そもそもおしどり贈与の目的は、生前に無税で贈与することで将来の相続税の負担を減らす点にあるが、夫婦間の相続では配偶者控除により1億6千万円までの相続財産には相続税が課税されないため、生前贈与をしなくても相続税がゼロとなる可能性は十分あり得る。おしどり贈与を使って本当に税金や報酬を合わせた支出を節約することができるのか、しっかりシミュレーションしてから利用を考えたい。
財務省はこのほど、2025年度の「国民への財政報告」を公表した。財政法に基づくもの。同法第46条は、「内閣は、予算が成立したときは、直ちに予算、前前年度の歳入歳出決算並びに公債、借入金及び国有財産の現在高その他財政に関する一般の事項について、印刷物、講演その他適当な方法で国民に報告しなければならない」と定める。
このうち25年度予算の「税制改正」については、(1)物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除の控除額及び給与所得控除の最低保障額の引上げ並びに大学生年代の子等に係る新たな控除の創設を行う、(2)老後に向けた資産形成を促進する観点から、確定拠出年金(企業型DC及びiDeCo)の拠出限度額等を引上げる、(3)成長意欲の高い中小企業の設備投資を促進し地域経済に好循環を生み出すために、中小企業経営強化税制を拡充する、(4)国際環境の変化等に対応するため、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置、グローバル・ミニマム課税の法制化、外国人旅行者向け免税制度の見直し等を行う――ことを報告。これらにより、「『賃上げと投資が牽引する成長型経済』への移行を実現し、経済社会の構造変化等に対応する」としている。
また、今国会では予算案が修正されたうえで可決。予算成立した経緯を踏まえ、「衆議院における修正により、低所得者層の税負担に配慮する観点や、物価上昇に賃金上昇が追いつていない状況を踏まえ、中所得者層を含めて税負担を軽減する観点から、所得税の基礎控除の特例を創設する」ことを報告。これによる所得税の減収見込額は6210億円であるとしている。
会社経営に法的トラブルはつきもの。訴訟社会に突入した昨今ではトラブルの対処の仕方一つで命取りにもなりかねないため、中小企業の間でも弁護士との顧問契約を検討する動きが目立ってきている。また、特許権などの重要性が広く認知され、ビジネス展開も増える中で、こうした知的財産権などの侵害に対する防衛手段として弁護士とのパートナー契約を締結する企業も増えている。
弁護士に対して支払った費用については、その具体的な内容によって税務上の取り扱いが微妙に異なるので注意が必要だ。例えば、月々の顧問料については、期間の経過に応じて損金に算入する。顧問料は特定のサービスを受けるために支払った対価なので、1年分まとめて支払っても短期前払費用の特例を基本的に適用することはできない。
また、訴訟の着手金については、例えば特許権侵害による損害賠償請求をするために契約した弁護士に対する訴訟の着手金であれば、支出日の属する事業年度で損金に算入することになる。着手金は訴訟の勝ち負けにかかわらず支払われるものであり、一種の「防衛費用」という性格も持ち合わせているためだ。
そして、訴訟に勝ったときに支払う成功報酬金については、(1)債務が成立している、(2)給付すべき原因となる事実が発生している、(3)金額を具体的に算定できる――という3つの要件を満たせば、その事業年度の損金となる。
財務省は4月21日、いわゆる“年収の壁”の引き上げに伴う税制改正について、同省のホームページに「基礎控除等の引上げと基礎控除の上乗せ特例の創設」と題する説明文と解説のための図表を掲載した。今国会で税制改正関連法が成立したのは3月31日。同法は同日施行され、4月1日に公布されている。
「基礎控除等の引上げ」については、基礎控除が48万円から10万円引き上げられて58万円に、給与所得控除の最低保証額が55万円から10万円引き上げられて65万円に、これの合計額である課税最低限は103万円から123万円に引き上げられると解説。
「基礎控除の上乗せ特例の創設」については、生活保護基準や最低賃金の水準などを勘案して、課税最低限を160万円に引き上げることと、中所得者層を含めた税負担の軽減を行うことなどを説明している。
永年勤続者への表彰は旅行や観劇などへの招待や記念品の贈呈が一般的だが、中には現金で支給している企業もある。ただ、覚えておきたいのは、一定の線を超えると、現金で支給した場合は原則として税務上「給与」と判断され、当の役員や従業員に所得税が課税されてしまうことだ。
現金を支給しても会社の福利厚生費として損金算入でき、役員や従業員に所得税が課税されない条件は、享受する利益の額が、その役員または従業員の勤続期間などに照らし、「社会通念上相当」と認められることと、さらに表彰がおおむね10年以上勤務した人で、2回以上表彰を受ける人については約5年以上の間隔をおいて行われるものであることだ。社員への感謝の気持ちとはいえ、大盤振る舞いには注意が必要だ。
給与として扱われた支給品は、会社がその物品に対して源泉徴収の義務を負うことになる。支給を受けた者も、給与所得が増えるため、所得税や住民税を増額して追納しなければならない。なお、社長賞やMVPなどの賞金は、原則としてすべて給与課税の対象となる。
関東信越税理士会はこのほど、2026年度の「税制及び税務行政に関する意見書」をとりまとめた。所属する会員税理士から寄せられた162の意見を審議し、53項目を採用した。内訳は、税制に関する意見が47項目、納税環境整備に関する意見が6項目となっている。
所得税法関係では「医療費控除を廃止すること」、相続税法関係では「贈与財産の加算制度の適用を受けたものについても、配偶者の税額軽減の適用を認めること」「相続開始前の贈与加算について各年基礎控除範囲内の贈与分を除くこと」、納税環境整備関係では「申告書のほか、更正の請求書についても書面添付できるようにすること」などを新規の意見として要望している。
同会では、医療費控除の廃止を求める理由として「医療費については、健康保険制度内で手当てされるべきである。高額医療費制度が存在することから医療費控除が発生するケースにおいては健康保険制度の対象とならない自由診療によることが多々見られる。医療費の支出に伴う担税力の減少を反映するという医療費控除の本来の目的からいえば、高額な自由診療を受けることを自ら選択した者ではなく、自由診療を受けることができない低中所得者が対象となるべきではないだろうか。また、所得控除の性質として所得税率の高いものほど恩恵を受けることができることや、そもそも所得税が発生しない低所得者にとっては恩恵を全く受けることができないことから、本当に医療費が重荷となっている納税者の助けになっているのか疑問である。医療費控除を廃止すれば医療費控除を受けるために多数の納税者が来場する申告会場の運営コストの削減にも繋がり、その分で健康保険制度を充実させるほうが公平かつ効率的に国民の健康に寄与できるのではないだろうか」とする意見をまとめている。
麻しん(はしか)患者が急増している。国立感染症研究所によると、3月16日時点で今年の報告数は32人。このうち、少なくとも22人が3月以降に感染しているという。はしかは本人自身に肺炎や脳炎など深刻な症状を引き起こすだけでなく、極めて強い感染力を持ち、特に妊婦が感染すると流産リスクが上昇するなどのおそれがある。
はしかの感染症の患者が増えている背景には、保健政策の変遷のなかで十分な予防接種を幼少期に受けられなかった“空白世代”が生じていることや、ワクチンの効果への不信などから子どもにあえて予防接種を受けさせない親の増加などがあるという。ともあれ、自分のためだけでなく家族や周囲のためにも、これらの予防接種を受けていない人はなるべく早く接種を受けるべきだろう。ただ、はしかの抗体検査や予防接種の費用は、医療費控除の対象にはならない。医療費はあくまで病気やけがの治療にかかる費用を指し、病気にかからないために受ける予防接種は該当しないというのがその理由で、これはインフルエンザなどにも当てはまる。
そこでチェックしたいのが、自治体のホームページだ。多くの自治体では抗体検査や予防接種費用の助成を行っていて、例えば東京・新宿区では、(1)19歳以上の女性で妊娠予定、または妊娠を希望する人、(2)そのパートナーや妊婦のパートナーおよび同居者――のいずれかの条件を満たす人に対しては、無料で抗体検査を実施し、予防接種にも最大5210円の助成を行っている。自治体によっては、予防接種の空白期間に該当する世代(2歳~高校生相当以下)を対象にしているところもあり、この機会に抗体検査や予防接種を受けることをお勧めしたい。
経済産業省は4月3日、米政権による自動車への追加関税措置の発効と相互関税実施の発表を受けて、短期の対応策として全国の関係機関に特別相談窓口を設置し、資金繰り支援などを実施すると発表した。国内企業が政府系金融機関から融資を受ける際の要件を緩和する。米政権の関税政策によって売り上げの減少や資金繰りの悪化が予想される場合も支援対象とする。
経産省がまとめた「米国の自動車関税発効等を受けた短期の支援策」によると、各地の地方経済産業局と全国の政府系金融機関、商工団体、中小企業基盤整備機構など約1千カ所に「米国自動車関税措置等に伴う特別相談窓口」を設置して相談・対応にあたる。
また、日本政策金融公庫などが実施するセーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)の要件を緩和し、支援対象を「米国の自動車等に対する追加関税措置の影響を受ける事業者」にまで拡大する。「売上高前年同期比5%以上減」という要件を満たさなくても、関税引き上げの影響を受けたことについての説明があれば適用可能とする。
貸付の対象となるのは設備資金・運転資金。貸付限度額は「中小企業事業」が7億2千万円、「国民生活事業」が4800万円。貸付期間は設備資金が15年以内、運転資金が8年以内で、据置期間は3年以内。貸付利率(基準利率)は「中小企業事業」が2.05%、「国民生活事業」が2.70%。
貸店舗を建てるにあたり、入居予定のテナントから工事費用の一部または全部を借りることがある。この借入金を「建設協力金」といい、地主は入居者に月々返済していくのではなく、一般的に5~20年間で賃料と相殺するという契約とするやり方だ。
この方式の地主にとってのメリットは、初期投資を抑えることができるという点だ。返済を無利息とすることも多く、契約によっては地主の負担をゼロにもできる。また土地と建物の借り手があらかじめ決まっているので、建物を建てた後に入居者を探す手間とコストがかからないのも大きい。信用力の高い借り手であれば安定的な収入を得やすくなる。
テナント側としても、土地を借りて自ら建物を建てるわけではないので、土地の取得費用を抑えることができ、賃料は建設協力金の返済分で減額されるため、少ない資金で店舗運営ができる。
デメリットとしては、テナントの意向に沿って建築した建物であることが多く、その借り手以外にとっては使いにくいものになる可能性があり、賃貸借契約が終わった後に別のテナントを探しにくくなるリスクが発生する。またテナント側は建設協力金を回収できなくなるリスクを抱えなければならない。貸す側と借りる側双方が、相手に経営能力や資産が十分にあると信用できてこそ使える手法だろう。
人事院はこのほど、2024年に懲戒処分を受けた一般職の国家公務員は285人だったと発表した。前年から45人増えた。処分の内訳は重い順に免職20人、停職50人、減給134人、戒告81人だった。
処分理由は、窃盗・暴行などの「公務外非行関係」が105人で最多。勤務態度不良や欠勤などの「一般服務関係」が91人、「交通事故・交通法規違反関係」が34人、不適正な業務処理や報告怠慢などの「通常業務処理関係」が21人、「横領等関係」が14人だった。
このうち国税庁は43人で、省庁別では海上保安庁の65人、法務省の44人に次いで3番目に多かった。全省庁の在職者数に対する処分の割合は0.09%。“マンモス官庁”である国税庁は、人数でみれば3番目に多かったものの、処分割合は0.07%で全体の平均を下回っている。
海上保安庁は24年6月、巡視船艇乗組員の航海日当不正受給が公益通報により発覚。同庁では過去3年分、合計約9千人を対象に調査を実施し、処分を下していた。
国や自治体から交付された補助金は、会社の「益金」として、法人税の対象になる。たとえ100万円の補助金を受け取れたとしても全額は自由にできず、その一部はもとから税金として納める分が含まれている。
ただ、「新型の機械設備を買いたい」という目的で受け取った補助金にすぐに法人税がかかると、設備を買った後に手元に納税資金が残らず、経営が苦しくなってしまう。それでは中小企業を支援するという補助金の趣旨からして本末転倒になってしまうため、補助金で固定資産を取得したときには、税務上の特殊な処理を行うことが認められている。
具体的には、設備の取得価額から補助分を差し引いた額で資産計上できる。80万円の補助金を使って100万円の機械を買ったなら、固定資産としての取得価額はその差額である20万円となる。このような特殊な処理によって、投資した年度にかかる法人税負担を抑える処理を、会計用語で「圧縮記帳」という。補助金によって得た利益を実態より「圧縮」するわけだ。
しかし注意したいのは、この圧縮記帳はあくまで課税の繰り延べに過ぎず、税負担がトータルで減るわけではない点だ。取得価額が減るということは、つまり年々の減価償却で損金にできる額が減ることを意味する。つまり2年目以降は、圧縮記帳をしない場合より法人税負担が重くなってしまうのだ。トータルでみれば繰り延べをしてもしなくても法人税負担は同額となる。
東京地裁は3月25日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対して宗教法人法に基づく解散命令を出した。教団側が即時抗告したため、解散命令の確定には時間がかかる見通し。解散が確定しても団体としての活動は可能だが、税制上の優遇措置の対象からは外される。
違法な勧誘で高額献金をさせるという民法上の不法行為を繰り返したとして、文部科学省が2023年10月に解散命令を請求していた。過去に法令違反を理由として解散命令が出されたのはオウム真理教と、幹部が詐欺で有罪判決を受けた明覚寺(和歌山)のみ。民法上の不法行為を理由にした判断は初となる。東京地裁は宗教法人格を与えることが「極めて不適切」と結論付けた。法人格が失われると、宗教法人に認められている優遇税制も利用できなくなる。
宗教法人は宗教活動による所得については課税されない。ただし、収益事業で得た所得は法人税の課税対象となり、法人税法施行令では課税対象になる収益事業として「物品販売業」「不動産貸付業」「旅館業」「倉庫業」など34種類の事業が列挙されている。例えば、神前婚や仏前婚などの結婚式の運営は宗教活動であり収益事業にはならないが、挙式後の披露宴のための宴会場の提供、飲食物の提供、衣装の貸し付けなどを有料で行うと、席貸業や飲食業、物品貸付業として収益事業になる。
また、宗教法人が境内の一部を駐車スペースと定め、時間極めで不特定多数の人に有料で貸したり、月極めで継続して同じ人に貸して料金を受け取ったりすれば収益事業(駐車場業)となる。駐車場用として土地を貸し付ける事業(不動産貸付業)も課税対象とされている。
決算日を決めるに当たって避けたほうがいい場合が多い時期というものがある。
1つ目は言うまでもなく自社にとっての繁忙期だ。業務量が増加して忙しい最中に、決算にまつわる事務負担までのしかかってくると、業務効率が低下することこの上ない。
2つ目は、利益額が急変動しやすい時期。決算日直前に利益額が急激に変化すると利益や納税額の予測値と実際の結果との間にブレが生じてしまう。
3つ目、支出が多くなる時期も避けたい。法人の決算にまつわる税金は決算日から2カ月以内に納付するため、多額の支出と決算後の納期限が重なってしまうと資金繰りが圧迫されかねない。考慮すべきは賞与、納期特例の源泉所得税、納期特例の個人住民税などだ。
4つ目が、在庫数量が増える時期。決算に当たっては、在庫の数量とその金額を確定するための「実地棚卸」が必須だ。現存する在庫の数量を確認するので、在庫が大量にあればあるほど作業も大変になる。
5つ目のポイントとして、税に関するルールには決算日や事業年度開始日を基準にして適用の有無が分かれるものが多くある。税制改正による不利な取り扱いを避けるため、もしくは有利な取り扱いを受けるために決算日を変更するというのは、十分あり得る話だ。
最後の6つ目が、顧問税理士の繁忙期だ。税理士の繁忙期はおおむね年末調整と確定申告の時期(12月~3月)と、一番多いとされる3月決算法人の申告時期(5月)なので、これらの時期を外した決算日にしておくと税理士とのやりとりや事務処理がスムーズになるだろう。
会計検査院は3月10日、特定健康診査(メタボ健診)などの受診者に疾患が見つかった場合、そのまま同じ医療機関で治療を開始すると病院側は初診料を請求できないルールになっているにもかかわらず、過大な診療報酬を受け取っていたケースが多く確認されたとする調査結果を報告した。
検査院は、メタボ健診や後期高齢者健診の実施状況を調査。健診実施日と同じ日に、健診を受けた医療機関でそのまま治療を受けたケースで、初診料の算定が適切になされていたかを調べた。健診実施日の再診料の算定状況についても検査した。制度では、受診者に疾患が見つかった場合、健診を実施した医療機関が引き続き治療を開始すると、初診料は算定不可とされている。健診で実施される問診の内容が、一般的な初診時の診療行為と重複する部分があるために設けられたルール。
検査院が18道府県で請求された2022年10月分の医療費を調べた結果、24年12月までに調査を終えた104医療機関のうち94機関で、健診日に初診料を算定していた。
健診日に再診料を算定することについては明確なルールがないものの、検査院は「再診に相当する診療行為には問診など基本的なものが含まれるため、再診料も算定するのは不適切」と指摘。しかし、調査によると18道府県の約7400医療機関で健診日に再診料を算定していたという。
検査院の推計によると、「算定不可」の初診料は約1億3600万円、「算定不適切」の再診料は約4億4600万円。国の医療費負担額はそれぞれ約5100万円、約1億5700万円とされる。
決算期を変更することで節税につながることがある。例えば、ある年の決算月に予想外の利益が出ることが決算期前に分かったとする。その会社が節税以外の理由も含めて決算期を1カ月早めれば、元々の決算月に発生する利益を来期に持ち越すことができ、次の1年を掛けて節税対策をじっくり練ることが可能となる。
ただし決算期を変更すると減価償却や法人税の軽減税率の計算に関する調整に手間が掛かる。また期の途中で変更すると事業年度は当然短くなるため、他の事業年度との業績比較が困難となる。納税期限が前倒しとなり、資金繰りに悪影響が出ることにも注意を払わなければならない。
決算期はむやみやたらと変更するものではないが、会社の状況に応じて変更することは検討に値するだろう。その場合、株主総会の特別決議を経て定款の変更を行い、議事録のコピーを税務署や都道府県税事務所、また事業所を管轄する地域の市町村に、書類を提出することになる。
東京地検特捜部は2月26日、大阪国税局の元職員と東京・世田谷区の不動産会社代表の2人を法人税法違反(脱税)の罪で起訴した。2人は共謀して2020年4月までの1年間に、この不動産会社が架空の出資金取引で損が出たように見せかけるなどして、約2億1千万円の所得を隠し、法人税約5100万円を脱税したとされている。東京地検は2人の認否を明らかにしていない。
元職員は大阪局で法人調査などを担当していたが2010年ごろに退職。その後はコンサルティング会社などを経営し、全国で節税に関するセミナーを開いていた。税理士の資格はない。元職員と不動産会社の代表は19年ごろに紹介で知り合ったという。
今回の事件では、元職員が所有する合同会社に対して不動産会社が出資。合同会社の業績が悪化したと見せかけ、不動産会社にも損失が出たように装っていたとされている。しかし実際には、出資金自体が架空で、損失は発生していなかった。元職員は「脱税指南」の報酬として約1700万円を得ていたものと見られている。
東京地検特捜部は2月6日の時点で元職員を法人税法違反(脱税)の容疑で逮捕。25日には東京国税局査察部が不動産会社代表を東京地検に告発していた。
税務調査の際に、自社の経理の正しさを主張するうえで根拠となる資料には、自社以外が作成した「外部証拠」と、自社が作成した書類である「内部証拠」がある。当然、証明力は外部証拠の方が大きい。これに該当するのは仕入先から送られてくる請求書や領収書などだ。一方、受け取った領収書などを紛失し、メモを残すとすれば、これは内部証拠に該当する。
だが自社内で完結してしまう取引は外部が絡まないため、内部証拠しか残せない。例えば役員報酬の決定にあたっては、仮に会社が再建中で金融機関などの債権者から役員報酬の金額を決定されたとしても、会社法上は、株主総会決議、取締役会決議、代表取締役の決定などを経て行われる。外部証拠ほどの証明力がないとしても、議事録、決定書を内部証拠として作成保存する必要があるだろう。なお書類以外にも、各種社内規定も同様に税務上の根拠となる。
日本証券業協会はこのほど「新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)」を公表した。調査によると、2024年に新NISAで利益が出たひとの割合は「成長投資枠」で70.2%、「つみたて投資枠」で82.8%だった。
NISAは株や投資信託の利益・配当にかけられる約20%の税金がゼロになる制度で、24年に仕組みが大幅に見直された。新しい制度(新NISA)には「成長投資枠」と「つみたて投資枠」が設けられ、それまでの“枠”とは異なり両方の枠で同時に投資ができる。年間投資額も拡充され、成長投資枠が従来の2倍の年間240万円、つみたて投資枠は3倍の同120万円となり、併用すれば年間360万円の投資が可能となった。保有限度額は2倍以上の1800万円となり、非課税で保有できる期間も無期限に拡充されている。
今回の調査によると、24年に新NISAで金融商品を購入した調査対象者7610人の平均購入金額は103.3万円だった。利用者の年収は300万円未満が39.7%、300万円~500万円未満が27.7%、500万円~700万円未満が17.1%、700万円~1千万円未満が10.0%、1千万円以上は5.6%だった。
成長投資枠での投資でプラスとなったひとの割合は70.2%、マイナスは12.2%。つみたて投資枠ではプラスが82.8%、マイナスが2.3%だった。
購入銘柄のタイプは、成長投資枠では「日本国内株式」が48.8%で最多。「日本含む投資信託(インデックス型)全世界株式」が13.1%、「投資信託・日本国内株式、債券、REIT」が3.2%などだった。つみたて投資枠では「日本含む投資信託(インデックス型)全世界株式」が36.8%で最多。「日本除く投資信託(インデックス型)全世界株式」が18.5%、「投資信託・日本国内株式、債券、REIT」が5.6%などとなっている。
自社の役員や従業員が亡くなったとき、会社として「弔慰金」を出すことがある。この弔慰金については会社の福利厚生の一環として、損金に含めることが可能だ。ただし弔慰金の額などによっては税務署に認められず、遺族には相続税がかかってしまうことある。
弔慰金の金額がどれくらいであれば法律上、「相当」と言えるのか。国税庁によれば、業務上の死亡であれば「死亡当時の賞与以外の普通給与の月額×36カ月分」、業務上の死亡でなければ「死亡当時の賞与以外の普通給与の月額×6カ月分」が相当としているようだ。
では「業務上の死亡」と、「普通給与」とは何を指すのか。まず「業務上の死亡」とは、「直接業務に起因する死亡または業務と相当因果関係があると認められる死亡」を指す。例えば業務のための行為により起きた事故や、業務に従事したことが原因で患った職業病、通勤途中の事故によって死亡したケースなどは「業務上の死亡」に該当する。逆に、業務中であっても、業務と無関係の持病を原因として死亡すれば「業務上の死亡」に該当しない。
これらの基準は、労災保険の支給要件にある「業務遂行性」と「業務起因性」と同じ考え方のため、何が「業務上の死亡」で何がそうでないかは労働関係法における「業務災害」に該当するかどうかで判断できる。業務災害については、厚生労働省がより具体的な基準を示している。
また「普通給与」とは、賃金給料のほか、扶養手当や勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計を指し、賞与は含まれない。非常勤役員などで賞与しか支給を受けていないケースなら、その役員が直近に受けた賞与、または業種や規模の類似する企業におけるその役員と同様な地位にある役員の普通給与や賞与の額などから、「もし普通給与と賞与の両方の形態で支給を受けていたとしたら、普通給与部分はいくらだったか」を算定する。役員への弔慰金が高額すぎると、給与扱いどころか会社の損金にもできなくなる。
弔慰金の支給にあたってトラブルを避けるためには、あらかじめ弔慰金の支給規定を作成して、周知しておくことが望ましい。税務調査対策だけでなく、遺族とのトラブルを防止するためにも、弔慰金規定を置いておきたい。
人気のオンラインゲームなどを配信する香港のゲーム会社「ヨタゲームズ」が2022年までの3年間で、日本のユーザーによるアイテム購入などで発生した消費税計約15億円を納めていなかったとして、東京国税局から無申告加算税を含めて約18億円を追徴課税されていたことが分かった。
当局は、同社が日本子会社に対して保有していた約15億円の債権を差し押さえた。同社は税務調査に協力的ではなく、当局に財産散逸の恐れがあると判断されたようだ。国税通則法で定められた「繰り上げ請求」という手法を使い、通常より早期の差し押さえを実施した。同社は22年までの3年間に、日本市場で約150億円を売り上げていたが、消費税を申告していなかった。
当局では、海外事業者の多くが利用する配信プラットフォームがあるシンガポールの政府に対し、租税条約に基づいて業者リストを求めるなどして税務調査を行った。しかし、同社が税務調査に協力的ではなく、日本での納税窓口となる「納税管理人」も置いていなかったため、当局では自主的に納税する見込みがないと判断し納付期限を繰り上げる請求を行った。だが、期限を過ぎても納税しなかったことから、通常より早い10日ほどの手続きで国内にある子会社の財産を差し押さえた。
日本では15年の税制改正で、オンラインゲームなどの国境を越えて配信されるデジタルコンテンツについて、配信元である海外事業者に日本国内のユーザーが支払った代金には消費税がかかることを明確化した。この税制改正により、海外事業者には消費税の申告・納税が義務化されている。
消費税を免れている海外事業者を把握するため、各国の税務当局間では租税条約に基づく「グループリクエスト」という仕組みを利用している。調査対象を特定することなく、一定の条件を満たした事業者の情報をまとめて提供するよう、相手国の税務当局に求めることができる。
25年4月からは、海外事業者が日本で売ったアプリにかかる消費税について、配信プラットフォーム側に課税する制度がスタートする。これまではアプリを開発した海外事業者側に納税義務があったが、今後は配信プラットフォーム側が事業者から代理徴収するかたちで日本に納税する。
従業員に支給または貸与する制服は、給与所得として源泉徴収する必要はない。従業員が制服の支給で得る経済的利益は、制服を必要とする社内ルールから生じた副次的な利益に過ぎず、給与所得者に特別な利益を与える目的で与えられたものではないからだ。さらに、給与所得者の役務提供に対する対価という性格も極めて希薄だということもある。
ただし、いくら会社が「制服」と呼んでいても、税務上、制服と認められないこともある点には気を付けたい。実は、非課税となる制服には一定の決まりがある。その事務服や作業服の貸与・支給が非課税となるためには、(1)もっぱら勤務する場所で通常の職務を行ううえで着用するもので、私用には着用しないあるいは着用できないものであること、(2)事務服等の支給または貸与が、その職場に属する者の全員または一定の仕事に従事する者の全員を対象として行われるものであること――が必要だ。
さらに厳格にいえば、着用する者がそれによって、一見して特定の職員または特定雇用主の従業員であることが判別できるものであることが条件となる。例えば、私服にもなり得る一般的なスーツを支給した場合には、給与扱いとなり、源泉徴収しなければならない。
2月17日に始まった2024年分の確定申告では、住宅ローン控除の手続きに関して、年末残高情報をマイナポータル連携で活用可能とした制度が導入されている。国税庁がこのほどまとめた「FAQ」によると、2月中旬以降に登録したケースでは、年末残高情報の格納が通知されるのは、登録完了から「2~5日後」となっているので注意したい。
住宅ローン控除を適用する納税者は、金融機関から交付を受けた年末残高証明書を、確定申告や年末調整の際に税務署または勤務先に提出する必要がある。だが年末残高調書を用いた新方式では、金融機関が納税者の住宅ローン残高情報を税務署に電子データで送信し、税務署はそれをもとに年末残高情報の電子データを作成。納税者は国税庁ホームページからマイナンバーカードを使ってe-Taxで申告する際に、マイナポータルを経由して年末残高情報を連携し、確定申告書の該当項目に自動入力できる。これによって納税者の書類の準備や申請手続きの手間を削減し、手続き漏れの防止にもつながるとされている。
年末残高情報を格納した旨の通知がe-Taxのメッセージボックスに届くのは、納税者が「マイページ」での登録を行った時期によって異なる。国税庁がまとめた「住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等情報のマイナポータル連携に関するFAQ」によると、住宅ローン控除の対象となる家に住み始めた年の年末までに登録をすれば翌年2月中旬、1~2月初旬までの場合は「順次」、2月中旬~10月までの場合は「登録を了した日から2~5日(土日祝日を除く)」とされている。
なお当該方式に対応した金融機関は、国税庁の「年末残高調書を用いた方式(調書方式)に対応した金融機関の一覧」によると、24年開始が21金融機関、25年開始が28金融機関(25年1月時点)にとどまっている。
医療費控除は基本的に医師による診療や治療を受けたときに利用できる制度で、「60分2980円」などの看板を掲げている民間マッサージ屋で施術を受けた費用は控除対象にならない。だが、マッサージの中でも、あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師が行う、病気やケガの治療を目的としたものであれば費用を所得から控除することが可能だ。
控除できるかどうかの境界線は必ずしも明確ではないが、単に疲れを癒すものや体調を整えるものは対象外となる。例えば「定期的にマッサージを受けないと体調が悪くなりやすい」といった理由で受ける施術では、医療費控除の適用について税務署に納得してもらうのは難しい。何らかの症状を直す治療の意味合いがあることを証明できるかどうかがポイントとなる。
政府は2月4日、「所得税法等の一部を改正する法律案」を国会に提出した。これにより2025年度税制改正関連法案の本格的な国会審議がスタートする。
財務省がまとめた同法案の概要では「物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除の控除額及び給与所得控除の最低保障額の引上げ並びに大学生年代の子等に係る新たな控除の創設を行う」「成長意欲の高い中小企業の設備投資を促進し地域経済に好循環を生み出すために、中小企業経営強化税制を拡充する」「国際環境の変化等に対応するため、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置、グローバル・ミニマム課税の法制化、外国人旅行者向け免税制度の見直し等を行う」「これらにより、『賃上げと投資が牽引する成長型経済』への移行を実現し、経済社会の構造変化等に対応する」としている。
個人所得課税では、基礎控除額を最大58万円とし、現状よりも10万円引き上げる。給与所得控除の最低保障額も10万円引き上げ65万円とする。19歳から22歳までの大学生年代の給与収入が150万円以下の場合、親が63万円の所得控除を受けられる特別控除を創設し、給与収入が150万円を超えた場合の控除額は段階的に減額して適用する(25年末の年末調整から適用)。
防衛増税については、法人税に関し26年4月1日以後に開始する事業年度の法人税額から500万円を控除した額を課税標準とする税率4%の新たな付加税を創設する。
相続に係る所有権の移転登記については、登録免許税の免税措置を2年間延長する。
業務上のミスによって、損害賠償金を支払うことになってしまった。ただ賠償額が大きすぎるため、支払いは数年間に分けて払うことで先方と同意したとする。
通常、業務の遂行に関連する損害賠償金は、その債務が確定したときの必要経費に算入される。いわゆる「債務確定主義」といわれる会計上の原則だ。
しかし分割で支払う損害賠償金は、それぞれの額を実際に支払った年の必要経費に算入しなければいけない。分割払いは支払期日が到来してはじめて具体的に債務が確定するという解釈によるものだ。
たとえ最終的な賠償金の総額について当事者間で合意があったとしても、総額を一括して未払金に計上することは認められず、その支払期日が到来する都度、その支払期日の到来した金額を必要経費に算入する。2つのやり方から好きなほうを選べるわけではないことに気をつけたい。
損害賠償金のうち、保険金などで補てんされる金額があるときは、その金額を差し引いた金額が必要経費になる。またたとえ業務に関連していても、事故原因に故意・重大な過失があれば必要経費としては認められない。無免許運転、スピード違反、酒気帯び運転、信号無視などによる事故は、特別の事情がない限り重大な過失があったとされる。
事故を起こしたのが従業員であった場合、その責任に応じて損害賠償金の一部を本人に負担してもらうのは法律上は可能だ。ただ事業主は社員の労働によって利益を得ている以上、社員のミスもある程度カバーすべきという考え方があるため、よほど大きな過失がない限りは請求は認められない傾向にある。
国土交通省は、高齢者世帯の住宅耐震化を促進するため、住宅金融支援機構のリバースモーゲージローン「リ・バース60」を活用した耐震改修融資の新制度を設ける。金融機関への利子補給を実施することにより、利用者に対して無利子または低利子で資金提供できるようにする方針だ。
「リ・バース60」は高齢者を対象とした住宅ローンで、住宅金融支援機構と提携する民間金融機関が窓口となって提供している。毎月の支払いは利息分のみとし、元金は利用者の死亡時に担保物件の売却代金などで一括返済する仕組み。国交省の案では、利用者が70歳以上であれば利息分の支払額もゼロにする。国が金融機関に利子補給することで、利用者は金利負担分まで実質的にゼロとなるわけだ。早ければ今年度末までに新制度を整備し、金融機関が新基準に沿ったローンを提供できるようにしたい考え。
新たな制度では、耐震改修を条件に、利用者が70歳以上の場合は利息分の支払額もゼロにする。元金分はもともと返済していないので、毎月の支払額が実質ゼロとなる。60歳以上70歳未満の場合は、本来の金利の3分の2を国が利子補給し、利用者の金利負担を3分の1に抑える。対象となる耐震改修としては、柱の補強や屋根の軽量化などを想定している。
国が住宅金融支援機構に出資。機構が資金運用して財源を捻出し、金融機関への利子補給に充てる。対象となるローンの金利には上限を設ける。24年度の補正予算で確保した21.6億円をこの事業に投じる考え。
経営者が応接室に飾る絵画を画廊で2点購入したとする。ひとつは大きいサイズで150万円、もう1点は小さめで85万円だった。このとき、小さめの絵画については取得費を複数年に分けて損金にできるが、大きいサイズのものに関しては所得計算において損金化できない。
事業で使う資産の多くは時が経過するごとに価値が減っていくため、法定耐用年数に応じて毎年必要経費として処理(減価償却)する。しかし、土地や借地権のほか、古美術品、古文書、出土品、遺物といった歴史的価値がある美術品は価値が減少しないので、減価償却の対象にはならず、経費(損金)にできない。また、いわゆる歴史的価値はなくても、取得価額が1点100万円以上の美術品も非減価償却資産になる。
ただし、100万円以上の絵画でも、時間が経てば明らかに価値が下がるようなものであれば減価償却できる。例えば、会館のロビーや葬儀場のホールのような不特定多数の人の目に触れるような場所の装飾・展示のための絵画は減価償却資産になる。また、移設できない美術品で他の用途に使えないのであれば同様の扱いとなる。ちなみに絵画の法定耐用年数は8年だ。
全国法人会総連合(小林栄三会長)はこのほど、「景況感アンケート」の結果を発表した。過去最大の引き上げ額となった2024年度の最低賃金について6割が「社会情勢を考えるとやむをえない」として許容する一方、「許容できない」との回答も16.3%に上った。
この調査は会員法人の業績などについて毎年6月と12月に実施。今回の12月調査には「法人会アンケート調査システム」への登録事業者のうち13%にあたる1836事業者が回答を寄せた。
全国加重平均で51円と過去最大の引き上げ額となった最低賃金について「どのように感じたか」という問いに、「許容できない」と回答した事業者は16.3%。「社会情勢を考えるとやむをえない」が62.5%、「妥当」が16.8%、「さらなる引き上げが必要」が4.4%だった。
最賃の引き上げが経営に与える影響については、「あまり影響しない」が24.2%、「影響はない」が8.8%だった。一方で、「大きく影響する」が21.8%、「多少影響する」が45.2%で、全体の3分の2は影響があると回答した。
賃上げに関する悩みや課題を問う項目(複数回答)では、「賃上げ原資の確保」(53.8%)、「人件費の増加による採算悪化」(51.8%)、「いったん上げた賃金を下げられないリスク」(42.9%)、「他社の賃上げによる人材確保への影響」(36.1%)、「社員のモチベーション」(31.5%)などが挙げられた。
毎年この時期に増えるのが、税務署員を装って現金自動預払機(ATM)で現金を振り込ませる「振り込め詐欺」だ。近年では現金を直接狙うだけでなく、勤務先や取引銀行の情報を問い合わせる事例や、未公開株・社債の取り引きに関連して銀行の口座情報を聞き出そうとする事例など、さまざまな被害が報告されている。その手口も複数人がそれぞれ税務署、警察、金融機関を装うなど複雑さを増していて、「自分だけは大丈夫」と思わず、疑ってかかる心構えが求められる。
国税局や税務署が金融機関の口座を指定した上で税金の振り込みや還付金の支払いのためにATMの操作を求めることは絶対にない。また本物の税務職員が税務調査や滞納整理を行う場合、必ず顔写真付きの身分証明書を携帯している。少しでも怪しいと思ったら身分証明書の提示や、直接税務署への問い合わせによる確認をすべきだ。仮に本当に税務署からの連絡であったとしても、一度「顧問税理士に相談して折り返し連絡します」と答える習慣をつけておくことも詐欺被害の防止には役立つ。詐欺ばかりは、いかに税理士が有能であろうとも、納税者本人が直接対応してしまうなどの場合には防ぐことができない。
詐欺の被害は盗難などと異なり、雑損控除などの救済手段も適用されないので、被害に遭ってしまうと泣き寝入りせざるを得ない。警察や国税もこの時期には過去の被害例などを挙げて注意を呼び掛けているが、いたちごっこのように詐欺の手法は年々新しく、また高度化している。重ねて言うが、「自分だけは大丈夫」と思い込まず、不審な点がなくても必ず家族や顧問税理士、あるいは警察などに確認し、その上で周囲と相談して対応することが重要だ。
不動産オーナーの資産運用の新たな選択肢として“エレベーターリース”が注目されている。1棟マンションなどの保有物件に設置されている減価償却済みのエレベーターを専門事業者へ売却し、その後はリースによって従来通りに利用していくスキームで、最終的には買い戻すことも、リース契約を再度更新することもできる。減価償却済みの資産を現金化して修繕費用に充当するなど、新たな資金調達手法として活用することも可能だ。
エレベーターの法定耐用年数は17年。それを経過すれば減価償却が終了する。エレベーターリースは、そうした減価償却済みのエレベーターを専門事業者が購入し、そのうえでリース契約を物件オーナーと結ぶ。リース契約期間中の保守・メンテナンス費用はオーナーが負担する。将来的に「購入選択権」を行使できるように設定しておけば、オーナーが買い戻すこともできる。
専門事業者であるエレベーターアセットのシミュレーション(東京・新宿区)によると、東京23区内で築25年・4階建て450kgのエレベーターの場合、同社が物件オーナーに一括で支払う買取価格は237万6千円(税抜、以下同)。オーナーは売却後、同社と10年間のリース契約を結ぶ。月々のリース料は1万4千円で、10年間の支払総額は168万円となる。リース期間終了時の購入選択権行使額は17万3280円。売却時に受け取った金額からこれらを差し引いても、オーナーの手もとには52万2720円が残る計算だ。つまり、同社から支払われた買取価格の11%~20%程度の収益が期待できる。ただし、当然ながら一時的に得た売却益には税金が発生してしまうので、それを避けたいのならば赤字の決算期にあわせての利用や、同じ事業年度内にまとまった支出が計画されているケースでの活用を検討したい。
当然、売却時点での現金化のメリットも大きく、調達した資金を修繕費用に充てるなど、使途はオーナーが自由に判断できる。
エレベーターアセットではリース事業に加え「エレベーター広告」のスペース提供も行う。オーナーから買い取ったエレベーターの内壁などにポスターを貼り付け、広告収入を得るという仕組みだ。マンションの住人など多くの人の目に触れるスペースであることから、広告効果は高いという。これにより、不要なポスティングチラシを減らす効果も期待できる。エントランス・集合ポスト周辺の美化が保たれることで、物件価値がアップして空室が減り、家賃収入のアップにもつながることだろう。広告クライアントとしては、ポスティング行為に対するマンション住民からの苦情や、不法侵入を疑われての通報・クレームなどから解放される。加えて、紙資源の無駄を省くことでゴミの削減と、環境に配慮した企業としてのイメージ向上にもつながる。
報酬はなるべく多くほしいが、報酬額を上げれば当然その分だけ所得税も上がってしまう。かといって報酬を絞れば、会社の利益がそれだけ増えて法人税が上がってしまう。そんなジレンマで、自分の報酬をどれほどに設定するか悩んでいる社長さんも多いだろう。そこで会社の税金を減らしつつ、社長個人の税金を増やさずに老後のための資産形成もできる「小規模企業共済」の活用を考えたい。
小規模企業共済は、常時使用する従業員が20人以下(サービス業、小売業は5人以下)の会社役員か個人事業主が入れる共済制度で、社長本人以外にも、共同経営している家族従業員が入ることも可能だ。加入メリットとして、掛け金は全額が所得から控除され、さらに共済金の受取時には一括であれば「退職所得」として一定額までは課税されず、また課税されたとしても給与所得に比べて格段に低い税率が適用されることがある。さらに年金として受け取れば「公的年金等の雑所得」となり、これも1年当たりの受取金額を抑えることで非課税にすることができ、本人が亡くなって遺族が受け取れば「相続人の数×500万円」の非課税枠が使えるという、多重の税優遇が魅力だ。
掛け金の上限は月額7万円で、その範囲内で小刻みに設定することができる。仮に月額7万円の掛け金を社長が支払い、その分を役員報酬に上乗せすると、社長個人としては増額された月7万円分がそのまま全額控除されて税金は増えず、老後の資産形成ができる。さらに会社としては、月7万円が給与支払いとして損金になり、年84万円の利益が減ることになる。個人と法人で、ダブルの節税につながるわけだ。
メリットの大きい小規模企業共済だが、もちろん注意すべきポイントもある。一つは、節税効果だけを重視して掛け金を多めに設定すると、あとで支払いが厳しくなる可能性がある。掛け金は加入後でも減額させることができるが、減額した部分がそれ以降まったく運用されずに放置されてしまうという特徴がある。つまり掛け金を7万円に設定して5年間支払い、その後4万円まで下げると、差額の3万円分については、それまで5年間支払ってきたにもかかわらず、その後共済金が支払われる時まで出金も運用もできない“死に金”となってしまうわけだ。
また加入期間が短いと元本割れしてしまうケースがあるなど、気を付けるべき点もある。それでも小規模企業共済は、加入要件さえ満たせるなら入っておいたほうがいいおトクな制度と言えるだろう。
YouTubeの「国税庁動画チャンネル」に登録された動画のうち、2023年12月~24年3月に最も多く視聴されたのは「スマホ申告、医療費控除の入力方法」のタイトルでアップされた約14分間の動画だった。国税庁が昨年の確定申告期の再生数をとりまとめたもの。
この動画は、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を経由して行うスマホ申告での「医療費控除の入力方法」を解説する内容。4カ月間での再生数は154万6315件だった。
ほかに、「スマホ申告、マイナンバーカードを利用したe-Tax送信方法」(再生数68万9863回)、「マイナポータル連携(事前準備)」(同62万3346回)、「スマホ申告、ふるさと納税(寄附金控除)の入力方法」(59万467回)、「パソコン申告、医療費控除の入力方法」(52万8485回)などが多く視聴された。再生数の上位10番目までは、いずれも電子申告での入力方法や送信方法、申告書作成手順などを解説する内容のものだった。
刑事事件の時効は、強制わいせつ等致死で30年、傷害致死で20年、業務上過失致死で10年など、罪状と刑罰の重さによって規定されている。さらに人を死亡させた犯罪のうち、殺人や強盗致死など法定刑の上限が死刑の犯罪については、2010年の法改正で時効がかからなくなっている。
では納税義務にも時効はあるかというと、刑事事件と同様、時効までの期間が段階的に規定されている。所得税でいえば、期限内に申告していれば3年を経過すると国は税金を徴収する権利を失う。期限内に申告していなければ5年。贈与税の時効は基本6年。偽りや不正があるとき、また脱税に該当するときは、あらゆる税目の時効は一律7年となる。つまり税の時効の最長は7年だ。
時効までのプロセスだが、漫然とカレンダーを眺めていればすんなりと時効が成立するというわけではない。基本的に時効までの期間内には必ず税務署から催促状が届き、6カ月以内に差し押さえがあれば時効は中断される。ここでいう「中断」とは、野球の試合が雨で一時中断するのとは違い、催促状の送付日から新たに時効までの期間がスタートする「リスタート」の意味を持つ。
また、延滞していた本税を支払ったとしても、延滞税があれば時効は停止される。時効期間もリスタートせず、何年経過しても時効はなく、本人が死亡しても未納分は相続財産の対象になり、相続人に引き継がれる。さらに時効を意図的に狙って逃げたと判断されれば脱税とみなされ、刑罰の対象となり、加算税も課される。
中小企業庁はこのほど、同庁ホームページに「認定経営革新等支援機関制度における早期の更新申請のお願い」を掲載。2025年度にかけて認定の更新申請が必要な支援機関が多数存在するとして、経済産業局での審査を円滑に進めるため、早期の手続きを呼びかけている。
経営革新等支援機関制度は、18年7月に施行された改正中小企業等経営強化法により、すべての支援機関に対して更新申請が求められることとなっている。5年ごとに更新申請する必要があり、更新が認定されないと、その期間の経過によって認定の効力を失う。
23年度後半以降は、更新申請数の大幅な増加が見込まれている。18年度に新たに認定を受けた支援機関が多く、これらが1回目の更新を迎えることに加え、12年度の制度開始時に新規認定を受けた支援機関が2回目の更新時期を迎えることが要因だ。
更新は、所管の経済産業局に申請する。有効期間が満了する日の30日前までに更新申請が必要となる。
中企庁によると認定経営革新等支援機関の数は23年度末で約4万機関。このうち「税理士」が47%を、「税理士法人」が9.9%を占めている。
国税庁はこのほど、2025年3月2日(日)に確定申告の相談対応と申告書の受付を行う税務署の一覧をとりまとめた。通常、日曜日には確定申告期でも対応していないが、当日に限っては「閉庁日対応」として申告書等を受け付ける。
閉庁日対応をする税務署の一覧はホームページに掲載されている。税務署ごとに署内、署外会場、合同会場といったように対応場所は異なる。また、道府県内の一部の税務署で閉庁日対応を行う場合は、「確定申告電話相談センター」などでも道府県内の納税者の電話相談に答えるとしている。
なお国税庁は、会場は混雑が予想されるとして、ホームページ上の「確定申告書等作成コーナー」を経由した自宅からのe-Taxを推奨している。